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子供のセカイ。112

[387]  アンヌ  2009-12-05投稿
それにしても、広場の中央に突然やって来た美香たちに対して、誰も不審そうな目を向けないのは不思議なことだった。広場にいる人々は、てんで好き勝手に振る舞い、自分たちで楽しんでいる。
美香はしばらく首を巡らした後、一人の中高年くらいの女性に目をつけた。「おばさん」という人種は、たいてい困っている人に対して親切なものだ、と美香は勝手に思っていた。
「あの、すみません……。」
クレープを売る店の前にいたその人は、今気づいた、というような顔で美香を見た。髪はくるくるのおばさんパーマで、服装や雰囲気からしても、好感が持てそうな庶民的な感じの人だった。
女性はちょっと戸惑ったような目で、だが優しく微笑んだ。
「はい、何かしら?」
「あの、支配者が住んでいるコルニア城っていうのは、どの辺りに――」
美香の遠慮がちな声は、突如空から降ってきたいくつもの奇妙な喚声に妨げられた。
「ホーウ!イェアー!ヘーイ!」
ライヴや祭りなどで、極限までテンションの上がりきった人が出すような、興奮しきった叫び声だった。美香が呆気に取られて広場の上空を見上げると、近くの民家の屋根から、十数人の若者たちのシルエットが飛び上がって、広場の上を横切っていった。
すごいジャンプ力……と感心する間もなく、若者たちによって大量のビラが上空からばらまかれた。
「支配者の有力な側近、覇王様からの大事なお知らせでぇーっす!みんな、その紙に載ってる奴らを見かけたら、オレらに即・通報な!よろしくぅー!」
先頭の若者は、近くの民家の屋根から広場を見下ろして、よく通る声でそう叫ぶと、また「ホーウ!イェアー!ヘーイ!」と叫びながら、屋根から屋根へと飛び移り、ビラをばらまいていった。
白い紙は青い空を埋め尽くすようにヒラヒラと舞い、多くは広場の石畳の上に横たわった。空中にある内にビラを掴もうと、何人かの子供たちが、はしゃいでビラのシャワーの中を飛び跳ねている。美香が呆然と若者たちの背中を見送っている内に、前に立っていた女性はしゃがみこんで一枚のビラを拾った。ビラを表にひっくり返した時、美香は確かに見た。――美香、耕太、王子、ジーナの、とても緻密なタッチで描かれた似顔絵が載っているのを。まるで写真のような出来の良さで、美香自身すぐに自分たちであると認識できた。

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