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神のパシリ45

[356]  ディナー  2009-12-07投稿
自らの根城で、
キアは笑いをこらえているようだった。

「…何がおかしい」

憮然としたゼルに、
キアはこらえきれずに
吹き出した。

「そりゃそうさ…はははっ…
いきなり頼って来たかと思えば、キミは半裸だし、レミーシュに至っては全裸だし…くくっ…。
いやぁ、僕も野暮だなぁって…」

ゼルと正反対に、キアは
さも楽しげだ。

「それより…くくっ、ごめん…右腕、大丈夫なのかい?」

「心配いらん。俺は利き腕は左だ」

「そう…それはなにより」




ゼルは冷静に切り出した。
「レミーシュに聞く事がある」

「あぁ、彼女ならもうすぐ着替え終わるはずだよ」

キアはいい加減笑うのをやめ、平静さを取り戻す。
「いや、大変だったね」

「全くだ」

「右はとっても強い麻酔をしたから、しばらくは大丈夫だよ」

「…すまんな」

「さて…どうしたもんだろうねぇ」

キアの言葉の意味は、失われたゼルの耳飾りだ。

あれがなくては主と交信できない上、魔法陣を使う類の力は出せなくなる。

「…不覚だ。もはや打つ手はないに等しい。俺には……


……奴は倒せない」



力の源も、自身の躯も欠け、怒りの矛先は
ゼル自身に向けられている。

「…レミーシュを徹底的に問い詰めよう。彼女は
何か知っているみたいだし」

「……あぁ」

「あと……」

そう言ってキアはいつものように微笑する。

「うちの主に、掛け合ってみないかい?」

「……月の女神に、死の小間使いが頼み事か?
笑えない冗談だ」



だが、キアは微笑を
打ち消し、真顔で続けた。


「いや、本気だよ?
…これ以上は、世界の
存続にかかわる。
いいかい?月は…人間の世界がなければ成立
しない存在なんだ。
こんな時まで斜に構えるなんて野暮な事は
僕はしないよ」


蒼煙色の瞳は、いよいよその霞を払おうとしていた。

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