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知ってるよ。??

[310]  やまだ  2006-08-12投稿
知ってるよ。

あなたが頑張ってた理由。

でも、あなた知らないでしょ。
あたしが頑張ってる理由。






――…??…―\r



なんとなく、次の瞬間が予想できる時ってある。



『…あたしが…絶対甲子園行こうねって言ったら…連れてってくれるって…』



泉先輩は泣きじゃくってる。


甲子園。


ストラップをもらった日、鈴木くんが嬉しそうに話してた。


――『泉先輩が甲子園行くんだって…』――



そうだよね。
先輩は今年で最後だから。



『約束したのにッ…』
『…大丈夫ですよ。』



鈴木くんの声が、やけに響いた。



『俺が、泉先輩連れていきます。』




鈴木くんの声は、
響いて 響いて
あたしを砕くくらい 響いて。


『…え?』
『泉先輩を、甲子園連れてきます。』
『…ヨシが連れてってくれるの?』
『連れてきますよ。絶対。』
『…ヨシには無理でしょッ。』
泉先輩の笑い声が聞こえる。


『む、無理じゃないですよ!』

鈴木くんの笑い声も

聞こえる。




鈴木くんが毎日毎日、飽きるくらい練習してたのは


自分のためでもあるけど



泉先輩のためでもあって



鈴木くんは、泉先輩に見て欲しかったわけで

あたしがずっと見てたことなんか

どうでもいいことで



だから



あたしが今

この教室に入る資格なんか


なくて。




『入る…理由すらないや…。』



流しきった涙は、家に帰るまで

ずっとずっとながれていた。




あたしも連れてって欲しい。
甲子園で頑張ってる鈴木くんを見たいよ。


でも、鈴木くんが切符をあげるのは

あたしじゃない。



その現実だけが

ガラスみたいに冷たくて

あたしの涙まで冷たくなっていた。



涙まで冷たい


苦しくて 苦しくて


辛くて 辛くて


涙が止まらないのに




それでもあたしは



鈴木くんが好きで好きで


仕方ない。


その現実がまた 冷たくて



あたしは 凍え死んでしまうかと思った。

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