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子供のセカイ。116

[345]  アンヌ  2009-12-10投稿
王子が深刻な顔で説明を終えた時、周辺の家の探索に行っていたジーナは、「こっちだ」と三人を手招いた。治安部隊の掛け声が近づいていたこともあり、全員が早足になる。ジーナについて細い路地を進んでいくと、ある一軒の家の前で一行は足を止めた。確かに、一般的に言うところの『可愛らしい』家だった。
ピンクがかった色の屋根、壁は塗ったばかりのような滑らかなクリーム色で、窓は花形にくりぬかれている。ファンシー過ぎて少し美香は引いてしまったが、ジーナはチャイムもノックもせずに茶色い木のドアを押し開けて中に踏み込んだ。
「不法侵入……。」
「きっとそういうものなのよ……。」
変な所で気の小さい耕太をなだめながら、続いて入っていった王子の背中を美香は追いかけた。
最後に入った耕太が扉を閉めると、家の中はうっすらとした闇に包まれた。外は青空だったが、日照条件が悪いのか、カーテンが引かれているせいか、まるで冬の夕方のような暗さだった。前にいる三人が一様に固まっているのに気づいて、耕太はぎくっと体を強張らせた。
「な、何だよ。危険な家だったのか…?」
「綺麗……。」
「は?」
うっとりとした美香の声に、耕太は驚いて三人の視線の先にあるものを見た。そして思わず声を上げてしまった。
闇の中でほのかな金色の光をまとって、ふわふわと宙を漂う無数のホタル――否、それはよく見ればホタルではなく、小さいがすらりとした手足を持つ妖精たちだった。くすくすと控え目な笑い声が闇に弾けて、光を散らす。彼女たちは互いにふざけ合っては、美しい透明な羽をひらひらと煌めかせ、踊るように宙を舞っていた。
「……どうやら、正解の家だったようだな。」
声もなく見とれていたジーナは、ハッと我に帰ったのか、少し恥ずかしそうな悔しそうな表情をしていた。相変わらず棒立ちで妖精を見ている三人を無理やり覚醒させ、一室しかない家の隅の何もない床に、四人で輪になって腰を下ろした。
「じゃあ、今後の行動について決めよう。私に一つ提案があるのだが………王子、聞いているか?」
ジーナの肩ごしに妖精たちの方を盗み見ていた王子は、慌てて調子を合わせた。
「も、もちろん。それで、提案って?」
「……まあいい。提案というのは、二手に分かれないかということだ。」

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