もしも明日が2-8
風の強い屋上。
ギィと音をたてて屋上のドアが開いた。
早稲田が振り返るとそこには見慣れた姿があった。
「若菜…」
「早稲田、来たくないなら来なくていいわ。
アナタの『眼』があれば安心だけど危ないことだし、それはやっぱり強要出来ないもの。
けどもし、私に力を貸してくれるなら、金曜の深夜、公園前に集合よ。」
じゃあね、と一度微笑むと若菜は屋上を出ていった。
「んだよ…
要するに来いってことじゃねぇか。」
ぼやく早稲田の茶髪を風が乱す。
空を仰げば、そこにはいつもと変わらない青空が広がっていた。
「なぁ、緋狩。
俺は、あいつの存在をこの中に加えていいと思うか?
お前のいなくなった穴を、あいつに埋めさせていいと思うか?」
既にいない人物に問いかけたところで、返事が帰ってくる訳はない。
「…なんて、答えは決まってるよな。」
彼なら言うであろう答えを、早稲田は知っている。
それでも問いかけたのは、やはりまだ彼を忘れられないせいだろう。
「全く、我ながら女々しいな。
いつまでも、さ。」
自分自身に対しての嘲笑を溢し、早稲田はその場に寝転がり空を眺めた後、静かに目を閉じた。
今だけは。
もう少しだけ、意地を張らせて欲しい。
そう心の中で呟いた。
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