滲む世界 最終話
ピンポーン♪
「はい」
「……俺…」
心臓が大きく跳ね上がる。
お兄ちゃんだ。
私はすぐにドアを開けようとしたけど…
開けられなかった。
お兄ちゃんの顔を見たら、気持ちが揺らいでしまいそうで…。
「…美智。開けなくてもいいから、話、聞いて」
お兄ちゃんの声…久しぶりに聞いた。
「俺…いつも気づくのが、遅いよな…」
「……」
「美智がいなくなって、俺にとって美智がどれだけ大事な存在なのか…改めて、分かった…」
…いまさら、何言ってるの…
「俺が…美智を幸せにできないことぐらい…分かってる」
私が、どんな思いで…
家を出たと…
「でも…一緒にいけるところまで、一緒にいたいんだ」
………
「ごめんな美智…。俺、美智と一緒にいたい…」
……ズルいよ。
「…ズルいよ。お兄ちゃん…」
私はドアを開けた。
私はお兄ちゃんに抱きついていた。
この先、どうなるかなんて分からない。
でも私は、今、お兄ちゃんと一緒にいたい。
END
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