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子供のセカイ。123

[382]  アンヌ  2009-12-24投稿
緊張が一気に解けた王子は、奇妙に込み上げてくる笑いを堪えることができなかった。執拗にじゃれついてくる猫を片手で牽制しながら、必死に顔を手で覆って高ぶる感情を抑える。ともすれば笑いと同時に涙が出そうで、そのまま泣き出してしまうことが恐ろしかったのだ。
王子は心の中で感謝した。
(ありがとう…………耕太。)
治安部隊には見えていないが、近くの民家の家壁に張りつくようにして、透明なままの姿の耕太と美香が立っていた。土から猫を想像し、なんとか王子を助けることができて、耕太はほっと大きく息を吐き、美香は壁づたいにずるずると座り込んで目元をしきりに指でこすった。美香の体が震えているのに気づくと、耕太はなだめるように軽く膝で美香の肩を押した。
ハントはリーダーらしく、なんとかこの場を治めようとして声を張った。
「おい、てめぇ!何だそのイキモンは!お前のペットか!?」
王子はまったく悪びれぬ様子で、さらりと返した。
「うん、そうだよ。」
「あの野郎……。」
耕太は思わず頬をひきつらせたが、美香にすねを殴られ、「ぐっ」と小さく唸って押し黙った。
ハントは値踏みするように腕を組み、首を傾けて、王子と彼を守るように寄り添う巨大な猫を眺める。
気を取り直したジーナは、未だ腕をつかんでいる若者二人の足を順番に踏みつけて拘束を逃れると、つかつかとハントに近寄り、剣を奪い返して鞘に納めた。
「奴自身はひ弱だがな。奴のペットは強いぞ。力仕事ならかなり戦力になると思うのだがな。」
「……。」
ニヤニヤした顔で宣伝するジーナを、ハントは疑わしげな目でジロリと睨み上げた。
「……役に立つかどうかは、オレが判断する。」
不機嫌に低い声で言ったハントの顔は、苦虫を噛み潰したように歪んでいた。ジーナは確信した。こいつはもう王子を消そうとはしないだろう。秘密兵器のように後から猫を出してきたことに苛立ってはいるが、だからといって怒りのままに王子を消すような馬鹿には見えない。言動はガキっぽいが、かなり打算的で頭のキレる奴のようだ。わざわざ損をして覇王を怒らせるような事態は避けたいはずだった。
ハントはものの十秒で決断すると、治安部隊の若者たちに手を振って命じた。
「こいつら二人とも、強制労働施設に連れていけ。猫に注意しろよ。暴れられたらめんどくせぇからな。」

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