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神のパシリ 57

[414]  ディナー  2009-12-29投稿
「人はな、誰しも
欲を持つ。

いや、人だけではない。
全ての命には欲がある。

神ですらな。

欲と言うと聞こえは
良くないが、
それによって得られる
力があるのも確かじゃ。

叶えるために、
誰しも生きている。

…生きる事すら、
欲であると思える。

だが、欲は強い。

強いがゆえ、道を
誤れば恐ろしい、
おぞましい、
醜いものと化してしまう。

それを制御するもの、
操るものとは…?




……ここじゃ」


ロゾは、自分の胸に
手を当てた。

「ここは欲と違い、
……弱い。

だからこそ、命はそれを
補完しようとし、
大きな塊となってゆく。

それが世界じゃ。

『喰らう者』が、
己の欲を果たす事は、
すなわち、強い欲が
世界になる事に
他ならん。

おぬしが声高に語る
始まりや終わりも
かすみ、

そこの…月の者の主が
重んじる『流れ』も
意味を成さなくなる。

そして…そのお嬢さんの
瞳のような…
無垢で純粋なものも、
きっと失われてしまう。



私は、世界を見る事は
叶わぬ。

『時』を、
『流れ』を、
犯してしまったのじゃ。

だが、私は…
美しい世界が好きじゃ。

弱いがゆえに愛し合い、
助け合い、
時に醜く争い、
それでも生きようとする。

それも『力』じゃ。



美しい…『力』じゃ」






ロゾは、指にしていた
黄銅の指輪を外し、
ゼルに差し出した。

「これを指にはめ、
陣を描け。
陣の書き方は指輪が
導いてくれる。

そこへ魂喰いを
誘うのじゃ。

その後は私に任せい。

指輪はおぬしにやろう。
信じておるから、
悪く扱わんようにな。

捨ててもよい。

信頼の証じゃ。それで
私は、いつでもおぬしを
感じられる。

…果たすがいい。



……おぬしの役を」


「…ますます、俺は
無力ではいられなくなるな」

ゼルはシニカルに
笑みを浮かべた。

呼応するように、
ロゾも笑う。

彼の笑みは、どこか
清々しかった。

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