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パンドラ

[333]  Mark  2006-08-14投稿
とろとろに、とろけてしまいそうな柔肉はアキラの指先に絡み付き、それ自体が生き物であるかのようにゼンドウしていた。
アユってばマジでスゲーって思った。実際、アキラの指はアユから分泌される酸によってボロボロに侵食されるかもしれない。
だが、この直接身体に触れるという実に古めかしいコンタクトによってのみ過去へとアクセスできるのだ。
アユが、うーんと唸る。節くれだったごっついアキラの指が、ゼラチン質の肉襞にキューっと締め上げられる。この感じがいちばん好きだった。
それはまるで恋の始まりにも似たハートを鷲掴みされるような甘美な痛みをともなっていた。
やがてトランスは、アクセスすると同時に完了する。だが、その命の煌めきのような一刹那は、永遠とも言い得た。そのとき、イメージの氾濫は奔流の鋭い刃となって俺の身体を透過し、細胞のひとつひとつを極彩色に染めあげながら、内から外へとズタズタに引き裂いてゆく。
とにかく過去に行くのが先決だし、触媒となりうる才能の持ち主にこれからまた出会えるのは、大海原に落ちた涙を見つけるようなものだろう。
それは百も承知だが、本能がこの雌を狩れと命令していた。もしかしたら半分はもう完全なグールになってしまっているのかもしれない。
もうなんにも考えたくはなかった。ただただ全てが面倒だった。理性では駄目なことはわかっている。わかっているからこそ苦悩がとまらない。触媒であるアユがいなくなってしまえば、レイナに逢う手立てはなくなってしまい、もう二度とうあいつにはあえないかもしれないが、実は、それを望んでいたのではないか。アキラは頭を掻きむしる。本当はレイナが入院したことを喜んでいるのではないか。
だから、いまこの場でアユを狩れ! もうレイナに関わるはやめるんだ。あいつはサナトリウムで静かな療養生活を送っているのだから、わざわざ波風の立つような馬鹿なまねをする必要はない。いったいサナトリウムを訪ねてレイナをどうするつもりなのか。
おもむろにアキラはゲルマニウムとオニキスで出来た、それでいて赤銅色の探査針を細心の注意を払いながら、アユの身体の中心に挿し入れていく。アユはぶるっと身震いしたかと思うと、小刻みに痙攣しはじる。その震えが探査針を伝わってアキラにもはっきりと感じられる。アキラは泣きながら、赤銅色したごく太の探査針で深々とアユを貫いてゆく。

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