世界でひとつだけの物語。?
コンコンッ‥と部屋をノックする音。
『フロントにね、一時預かって欲しいと、頼んでおいたんだよ。』
彼は私に優しく微笑み、そっとドアを開けた。
彼がフロントの人から受け取った物は、
綺麗にラッピングされた、少し大きめの箱と、
両手いっぱいの花束だった。
『桃子。メリークリスマス!!
はい。僕からのプレゼントだよ。』
『ありがとう。嬉しい!!』
大きな花束。
その花束は、
ピンクのガーベラに、
かすみ草が添えてある、
とてもシンプルな花束だった。
『クリスマスと言えば、ポインセチアだけど、
桃子には、ガーベラの花を贈りたかった。
僕の好きな花なんだ。
色は“桃子”にちなんで全てピンク。』
両手いっぱいのガーベラの花。
私が大好きなガーベラの花。
彼は、どうして私の好きな花が分かったのだろう。
『私も好きだよ。ガーベラの花。』
一輪でも凛としていて、
力強く咲いている、その姿が。
『本当!?よかった!!
桃子。ピンクのガーベラの花言葉を知ってる!?』
『花言葉?』
『“熱愛”って言うんだよ。
まるで、僕と桃子の事みたいだね。』
『うん。』
そんなキザな言葉さえも、
彼は、サラッと言ってくれる。
けれど、私は嬉しい。
だって、
彼と会っている時は、
彼は、私だけの彼氏でいてくれるのだから。
『ジャ〜ン♪プレゼント二つ目。
花束は、そこへ置いといて。
今度は、こっちを開けてみて。』
プレゼントしてくれた彼の方が嬉しそう。
二つ目のプレゼントの、
ラッピングをほどいた。
『‥‥こ‥これは‥‥‥。』
それは、
淡い“ピンク色の杖”だった。
『桃子の為に、特別に作ってもらったんだ。
可愛いでしょ!?
もちろんこれは“外出用”に使ってね。』
『ありがとう。
可愛い♪
私‥これからは、家に引きこもってばかりいられないね。』
『うん。そうだよ。
少しずつ、ゆっくりでいいんだからね。』
明日になれば、
元の私に戻るんだ――
今までの私に――
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