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天使のすむ湖11

[306]  雪美  2006-08-15投稿
香里はあれから何かに取り付かれたように、毎日真剣なまなざしであらゆるものをデッサンしていた。

俺が飾った花や買って来た金魚、コップに湖の風景も次々にスケッチブックに描き止めていた。下手だと自分では言っていたが見事なスケッチである。
相手にしてほしくてちょっかい出すと、きっーと睨まれたので、コーヒーを置いてアトリエを出た。

しばらく離れて書斎で勉強をしていると香里が入ってきた。
「最近は絵を描くのに夢中なんだねー」
すねたように言うと
「寂しい?」
下から覗き込んでいる。
「少しね」
「本当はすごく寂しいって顔に書いてあるわよー」
そう言って俺の肩に抱きついた。
「お見通しなんだなー」
「そうよ、だって大好きなんだものー」
「その口をふさいでやるー」
そのまま絡みつくようなキスをした。
香里は胸に顔をうずめたまま、
「本当はね、どうしても描いておきたいものがあるの」
「それは何?」
「もう一度キスしてくれたら、教えてあげる。」
今度はそっと口付けた。甘いイチゴの香りがしていた。
「一樹を描きたいの、究極の美少年を私の最初で最後の恋人をね、そのためには、ずいぶん離れていたから練習にデッサンしていたのよ。書いてもいいかな?」
「いいに決まってるだろう。」
そう答えると、湖に連れ出されて、水際でデッサンを始めた。
反対側にはたくさんのひまわりが咲いてセミは静かに鳴いていた。
「一樹に初めて会ったのもここだったわね。」
「うん、俺には天使に香里が見えたんだ。」
「うまいこと言って、がちがちだったわよー」
穏やかな風が二人を包んだ。

二人はまだキス以上はしていない、香里の病を思うといつもチャンスはありながらできずにいた。こんなこと迷っているなんて、誰にも相談はできない、白いブラウスからちらつく胸が、俺を誘っている気がしていた。
書斎でさっき見つけたターミナルケアに関する本には、本人の体力があり、望むならば願いを叶えて抱くのも一つのケアであるとあった。緩和ケアとは本人が望むならルールはないともあった。
今夜こそ誘ってみよう、香里はどう思うか、体力消耗しないためには、と考え続けていた。
俺がそばにいた証にしたいのだった。体力が落ちてくれば抱けなくなっていくから、そのときに後悔はしたくないのだ。
いとしい人が遠くなる前に・・・

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