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肌とねこ8

[347]  KSKくま  2010-01-05投稿
もやもやした気持ちも眠れば、そこそこに落ち着いた。
寝付きが悪かったのは言うまでもなかったけど。
金曜日はそれでも憂うつだった。今の状態では飲みに誘われても行けない。誘われても断るのが常だが、今は殊更に騒ぎたい気分だった。
それも無理だ。今関さんが待ってる。
閉塞感のせいでストーカー被害のホームページをはしごした。
それも途中で例の先輩に見つかって怒られた。
どうしょうもなく、仕事も手につかなかった。
退社時間までその調子で、先輩には幾度となく小突かれ、嫌な顔をされた。

そして、社外にはしっかりと今関さんが待っていた。
「すみません。遅くなって」
頭を下げた。
「いえいえ。今日は早く上がったんですよ。・・・金曜日なんでね」
今関さんお得意の笑顔だった。
それを見て思った。自分が随分身勝手な想いに駆られていたことに。
自由がないのは今関さんも同じだった。むしろ、よく知りもしない女をタダで警護するのだ。
割りに合う訳がない。
待ってる分だけ今関さんの方が辛いはずだ。
「ごめんなさい」
泣きそうになった。申し開きもできない。
「ああ!そんな、気を使わないで・・・」
気の良い今関さんならそう言うのも当然だった。「いえ、なに・・・。実は夕食に誘おうかと思って」
「へっ?」
忘れていた。
今関さんは独身。たとえ年が一回り違っても。
そして私はガードが甘く見える女。先輩曰く。
「何を食べに?」
これが甘いと言われる所以(ゆえん)なのだろう。
「お酒を飲まれるんでしたら、居酒屋かどこかへ」
年の功で女性心理を心得ている。少なくとも私にはジャストミートだった。

だからという訳ではない。
泥酔だった。
それでも記憶は抜けてないはず。
ただ、翌日の時点で思い出している自分に惨めさを感じる。

確か、
飲んでる最中にハゲた部分を撫でまくり、指をさして笑いまくった。そして送ってもらった揚げ句に敬礼して
「今関くん。げちよう(月曜)からまたヨロシク頼むよ」
と言った気がする。
失礼極まりない。

近寄ってきたキックを抱き上げると彼は横を向いた。アルコール臭が嫌いらしい。

こんな情けない状況でも救いはあった。
記憶の中の今関さんが敬礼を返してくれていたことだ。

つづく・・・

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