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神のパシリ エピローグ前編

[437]  ディナー  2010-01-06投稿
全ては終わった。

いや、始まったのかも
知れない。




誰もいなくなった街に
乱立する、墓の山。


三人で、少しずつ
築いている。

亡きがらは、魂の入れ物
でしかない。

だが、丁重に葬るのは、
死の小間使いにできる
わずかな現世への
関与だ。

魂を喰われ、輪廻から
外されてしまった存在。

止められなかった、
ゼルの弱さが生んだ
犠牲者だ。




「あらかた終わったね」

キアが、汗を軽く拭う。

「あぁ」

「これから、どうするんだい?」

「主の強制召喚があるまで、人間である事を
満喫している事にしよう」
「…変わったねぇ、短期間で」

キアはそう言って笑う。


「変わるから、きっと
人間は楽しいのよ」

レミーシュが呟いた。

「…神は、…変われない
でしょう?
変わる事なんてできないでしょう。
神は、人間の揺るぎない
支柱であり続けなければ
いけないもの。

自分の、揺るぎない
世界を持っていなくては
いけないもの。

でも、人間は違う。
考え方も、行動も
変える事ができる。
そして、選ぶ事も。

この先どうするのか。

生きるのか。

死ぬのか。

全て自分で考えて、

全て自分で選んで。

違うなら、また変えれば
いい。

そうして、人間は
人間になっていくんだわ。

神だって、人間には
なれないのよ。

けど人間は、
もしかしたら…

もしかしたら…」




「そうだな」

ゼルはシャベルを
地面に突き立てて、
レミーシュの頭を撫でた。

「お前から力強い言葉が
聞けて良かった。
……迎えが来たようだ」







ゼルの背後が揺らめき、
陽炎のように空間が
惑い、踊る。

それはやがて、一つの
『扉』
を形作っていく。

豪華な装飾等は実は
何一つない、
シンプルな

『地獄の門』。

「最後かどうかは
分からないが、
とりあえず別れだ。

…すまなかったな。

…ありがとう。


「…こちらこそ。
…またね」

ゼルの姿は、
揺らめき、消えた。

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