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ベースボール・ラプソディ No.14

[534]  水無月密  2010-01-07投稿
 薄暗い早朝のグランド。
 その中にひたすらバットを振りつづける、大きな人影が一つ。
「よくもこの鈍った体で、あいつの速球に反応できたもんだ」
 悲鳴をあげる掌を見つめ、大澤は喜々として呟いた。
 前日の興奮覚めやらぬ彼は、騒ぐ血を押さえきれずにこの場にきていた。

「あれ、大澤さんもきていたんですか」
 不意に声をかけられ、乱れる息もそのままに大澤は振り返った。
 そこには哲哉を先頭に、今日から彼の仲間になる面々がいた。

「朝練があるなら、そういってほしいものだな」
 少し不機嫌に言い放った大澤に、哲哉は笑ってこたえた。
「うちの部に朝練なんてないですよ、みんな勝手に集まってくるんです」
 らしさを感じて笑みをうかべた大澤。
 そして彼は、その中に肝心な人物がいない事に気付き、辺りを見回した。

「……これで全部か?」
 八雲が気になる自分を認めたくない大澤は冷静を装おうが、そこは聡い哲哉である。その心中を読み取り、笑みをもらした。
「八雲ならそろそろ来ますよ、死にそうな顔してね」
 そういって哲哉が視線を移すと、バックネットの裏からタイミングよく八雲が姿をあらわした。

「……何であいつは、練習する前からあんなに疲れているんだ?」
 息絶え絶えの八雲に、大澤はア然として哲哉に問いかけた。
「八雲は毎朝、十キロくらい走ってからきますからね」
「疲れている理由はわかったが、あれで練習に参加できるのか?」

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