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もしも明日が2-12

[234]  花神ミライ  2010-01-12投稿

「…よくあんな嘘、堂々とつけるよな。」
呆れた声で早稲田が言った。
「そうね、でも緋狩ならそう言うかなって思ってたら勝手に口がね。」

「それにしても、今回何で俺を引っ張り出した?
こんなことなら俺は必要ないだろ?」
「ええ、そうね。」
若菜の口角が僅かに上がっているのを見逃す早稲田ではない。
「…若菜、お前ワザと俺を引っ張り出したな。
ホントは知ってただろ。」
「さぁ?どうかしら。」
若菜は笑顔ではぐらかす。
どうやらシラを切り通すつもりらしい。
「ま、そういうことにしとくよ。」
「そ?」
「さて、俺たちも帰るか。」

二人の家は現在地から逆方向にある。
「早稲田。」
若菜が早稲田を呼び止めた。
「…明日からまた、資料室にいるわ。」
「あいつもか?」
「昼休みはいるかもね。」
「……気が向いたらな。」
「あらあら。
素直になったわね。
前は緋狩にだって時間かかってたのに。」
「俺だって成長してんだ。」
「あら、そう。
それと、明日から紗綾《さや》が帰ってくるわ。」
その瞬間、早稲田の表情が歪む。
「マジかよ」
「ええ。楽しみだわ。
いいわね、早稲田?」
早稲田の右手がスイと上がる。
右手を上げたまま闇に身を溶かした彼が振り返ることはなかった。


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