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虚無の旅 第三話

[347]  Clan  2006-08-15投稿
少年は小奇麗な宿屋に辿り着いた。他の宿は、どこも観光客で部屋が満室なので、此処がダメだったら、もう野宿しか道は無い。
宿の名前は雫亭。いかにも雨漏りしそうな宿だ。それでも、少年は躊躇い無く、宿の扉を押し開けた。眼帯を着けた、髪の長い店主が出迎えた。
「いらっしゃい」
「空室は?」
「いくらか有りますよ。でも、子供一人を泊める訳には」
「頼む!」
眼帯を着けた店主は困ったような表情を見せた。少年はしめたとばかりに拝み倒す。
「此処に泊めて貰わないと野宿なんだよ。良いだろ?」
「・・・解りました。今回だけですよ」
少年はその言葉を聞くと、料金を払い、足早に部屋へと向かった。
外見と同じく、部屋の中も綺麗であった。清潔そうなベッド、薄いカーテン。一時の間、高級な生活が出来そうだ。

何だか居心地が悪い。
味わった事の無い高級感など、そんなものである。
少年は暇が出来たので、宿の入り口まで戻り、ソファーに座って、しばし通行する客達に見入った。

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