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イヴの愛人

[710]  エリクシェード  2006-08-16投稿
※ナンバリングの無いタイトルはどれから読んでも問題ありません。
『本心』
東南アジアのとある国で、一人の若い男が恋人を裏切って咄嗟に殺してしまった。
男は焦りながら遺体を担ぎ、人気の無い森へ駆け込んだ。男は遺体を人の目が届かない場所に遺棄するつもりだった。
森の奥へ進むと薄暗い洞穴が見えてきたので、そこに恋人の遺体を埋めようと決心した。 中に入ると、そこは入り組んだ鍾乳洞だった。男は一番奥に恋人の死体を置こうと、洞窟内んを突き進んだ。
奥に進むにつれ、滝のような音が近付いて来た。音のする方向へ向かうと洞窟の吹き抜け部分に出た。
吹き抜けから差し込む日光を受けながら闇に染まる滝壺に向かって滝が流れ落ちていた。 男はそんな美しい風景にも見とれず、早々に遺体を滝壺に向かって投げ落とした。
その後、男は鍾乳洞を出ようとしたが、入り組んでいるので迷ってしまった。しばらく彷徨っていると、あの滝の方向から女性の唸り声のようなものが聞こえてきたので、男は気味が悪くなり、足を速めた。
ようやく鍾乳洞の入口に辿り着いたが、強い磁力のようなものが男を洞窟内に引き寄せた。男は必死にもがいたが、凄まじい邪悪な波動による磁力には敵わなかった。
男の体はそのまま恋人を投げ落とした滝壺に引きずり込まれてしまった。
滝壺は想像以上に深く、男はその中で何もできずにただ意識が失われていくのを感じることしかできなかった。
意識が完全に途切れる直前、男の視界に恋人の遺体が入り込んできた。 死に顔と目が合う。死に顔であるべき顔は笑っていた。憎悪とも喜びともつかぬ笑みだった。
「私を裏切ったこの男に復讐できる…」
「これでまた一緒にいられる…」
果たして彼女の本心はどうなのだろうか。

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