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幸運の女神-第二部 1

[546]  朝倉令  2006-08-16投稿


「お前ってホント、ずっと一緒にやってたみたいに違和感ないよな」

「ありがと。
リョージにそう言われると嬉しいよ♪」



「昭彦も大変やなァ。ライブが終わればソッコー仕事なんてよ」


「…そう思ったらそろそろツケた分を払って頂けますか?康介クン」


「チェッ、藪蛇かよ…」

「あはははっ!ここでもツケてんだぁ」



ライブ終了後は、いつも峠昭彦のお店〈マーキュリー〉で軽めの一杯。


 昭彦の本職はお店のオーナー 兼バーテンダーなのだ。



その後で、俺、倉沢諒司のバイト先であるファミレス〈コルス〉で腹ごしらえか…



 そうして次に石島康介のバイト先、カラオケボックス〈エコーズ〉に向かうとなると…



常に『客』でいるのは品川恵利花ただ一人って訳だ。


…まァ、それに異を唱える奴はいないけど。



恵利花と言う娘は、サービスする側のさり気ない気遣いをごく自然に受けとめてくれる。


そう、あくまでも『自然』に。




「エリカよぉ‥」「何?」

「お前ってさァ、もてなし甲斐のある女だよな、ホントに」


「…確かに、それは言えてますね」

「俺も賛成やな」



「それ、…誉めてんの?みんな」

「アハハ…秘密です」


「……ま、いっか〜」





俺達は、このままずっと平和にやっていけると信じていた。



 だが、周囲の状況は本人達の知らぬ間に動き始めていた。






「村岡か? 俺だ、霧島。あいつらの資料は? ふん、ふん、…判った。
夜中に済まなかったな。
じゃあ、おやすみ」



携帯をパチッと閉じた男は、霧島敬二郎。


 霧島は、かつて全く無名のバンドをビッグネームに育てあげた頃の、嵐の様な日々を思い起こしていた。



(また、俺のこの手で、時代を作りあげるのか…)



彼の目には、敏腕プロデューサーだった頃の精悍な光がよみがえっていた。





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