子供のセカイ。137
「お前らを消すより、働かせた方が早く計画が進む。だから治安部隊のお兄さんたちに痛めつけてもらう程度の、軽い罰にしてあげたんだ。」
「……お前たちがさっきから言っている、その『計画』とやらは一体何だ?覇王は何を企んでいる!」
ジーナは鞭打つような鋭い声で詰問したが、少年は大して怯えはしなかった。牢の中にいる人間など、怖くもなんともないといった様子だ。
少年は、「明日になればわかるんじゃないの?」と小馬鹿にしたように吐き捨てると、さっさと歩いて行ってしまった。
治安部隊の若者たちも、護衛のつもりなのか、ぞろぞろとその後に続く。最後に残ったのはリーダーであるハントただ一人だった。
無言でこちらを見ているハントを、ジーナはジロリと睨みつけた。
「まだ何か用があるのか?」
「……ほらよ。」
ハントは鉄格子の隙間から、ぽいっと丸い銀の箱を投げ入れた。床に転がり、通路で燃える松明に鈍く光を反射するそれを見て、ジーナは目を丸くした。
「これは…!」
「勘違いすんな。それは元々お前のだろう?どのみち、明日になりゃあ武器の剣は返されるし、そこでくたばってるクソ王子の猫も解放される。働くには個人の持つ最大限の力が必要だからな。」
ジーナは縛られた手で器用に箱を拾い上げると、蓋をひねって開けた。中には薄黄緑色の軟膏がまだ半分以上残っていた。
ハントは片頬をひきつらせて、皮肉な笑みを浮かべた。
「万能薬とはな。あんた、いいモン持ってんな。」
「試したのか?」
「ああ。あんたが傷つけてくれたオレの部下の背中に、ちょいと塗ってみた。案外効くんでびっくりしたよ。猫に食らった打撃とか、他にも火傷とか色々試した。」
「……何はともあれ、助かる。感謝する。」
ジーナは神妙な態度でうつむくようにハントに軽く頭を下げると、傍らの王子に呼び掛けた。
「大丈夫か?今、薬を塗ってやるからな。」
「…う、ありがとう……。」
ハントは、後ろ手に縛られた手で甲斐甲斐しく王子の世話を焼くジーナを見て、思わず肩をすくめた。そして彼らが気づかぬ内に、そっとその場を後にした。
(……いーい奴らだとは思うけどなぁ……。オレの命を懸けてまで助ける価値はあんのか?)
ハントは地上へ続く石階段を登りながら、自問自答を繰り返していた。しかしすぐに面倒になってがしがしと頭をかく。
「……お前たちがさっきから言っている、その『計画』とやらは一体何だ?覇王は何を企んでいる!」
ジーナは鞭打つような鋭い声で詰問したが、少年は大して怯えはしなかった。牢の中にいる人間など、怖くもなんともないといった様子だ。
少年は、「明日になればわかるんじゃないの?」と小馬鹿にしたように吐き捨てると、さっさと歩いて行ってしまった。
治安部隊の若者たちも、護衛のつもりなのか、ぞろぞろとその後に続く。最後に残ったのはリーダーであるハントただ一人だった。
無言でこちらを見ているハントを、ジーナはジロリと睨みつけた。
「まだ何か用があるのか?」
「……ほらよ。」
ハントは鉄格子の隙間から、ぽいっと丸い銀の箱を投げ入れた。床に転がり、通路で燃える松明に鈍く光を反射するそれを見て、ジーナは目を丸くした。
「これは…!」
「勘違いすんな。それは元々お前のだろう?どのみち、明日になりゃあ武器の剣は返されるし、そこでくたばってるクソ王子の猫も解放される。働くには個人の持つ最大限の力が必要だからな。」
ジーナは縛られた手で器用に箱を拾い上げると、蓋をひねって開けた。中には薄黄緑色の軟膏がまだ半分以上残っていた。
ハントは片頬をひきつらせて、皮肉な笑みを浮かべた。
「万能薬とはな。あんた、いいモン持ってんな。」
「試したのか?」
「ああ。あんたが傷つけてくれたオレの部下の背中に、ちょいと塗ってみた。案外効くんでびっくりしたよ。猫に食らった打撃とか、他にも火傷とか色々試した。」
「……何はともあれ、助かる。感謝する。」
ジーナは神妙な態度でうつむくようにハントに軽く頭を下げると、傍らの王子に呼び掛けた。
「大丈夫か?今、薬を塗ってやるからな。」
「…う、ありがとう……。」
ハントは、後ろ手に縛られた手で甲斐甲斐しく王子の世話を焼くジーナを見て、思わず肩をすくめた。そして彼らが気づかぬ内に、そっとその場を後にした。
(……いーい奴らだとは思うけどなぁ……。オレの命を懸けてまで助ける価値はあんのか?)
ハントは地上へ続く石階段を登りながら、自問自答を繰り返していた。しかしすぐに面倒になってがしがしと頭をかく。
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