幸せをきみに -届け、この歌- 18
「和に会ったんやな」
あたしは何も言えず、
黙って首を小さく縦に振った。
翔ちゃんはあたしに
視線を合わさず
またゆっくり歩きだした。
「でも、何で和のって
知ってるん?」
あたしは追いかけるように
足早に自転車を押した。
「…ああ、えっと…
前に、中学の時に
あいつがそれ、見せてくれて…
友達になんか似てるって、
そう言って。」
「友達?」
翔ちゃんの視線が
またあたしの手の中の
携帯に移った。
「…また会うん?あいつと」
「…わからへん…。
また連絡するとは言ってたけど」
「その連絡がきたらお前はまた、
あいつに会いに行くんやろな」
「……」
あたしは何も言えなかった。
きっと翔ちゃんの言う通り。
黙っていると
翔ちゃんがふっと笑った。
「でも、まあ良かったやん。
これで和にギター、
聞かせられるんちゃうん?」
さっきの空気を
取り戻そうとするかのように
笑って話す。
この笑顔に胸は痛んだけど
やっぱりほっとさせられた。
「…でも今はまだいいや」
「何で?」
「もっと…上に行ってから
聞かせてやりたいねん」
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