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永久に§10§

[453]  夏姫  2010-01-29投稿
結局、その日の学校帰りにサイにメールをしてみた。

《お疲れさま。1時間だけでいいから相手してくれない?》

…3分後。

サイからの返信は無かった。

5分、10分…。

いくら時間が過ぎても、サイから連絡はない。
私の心に、焦りだけが走る。
仕方なく、私はサイに電話をしてみる事にした。

『――お客様の都合により、ツウワガデキマセン――』

……え?

頭の中が真っ白になった。
思考回路がショートし、思わず携帯を落としそうになる。

…どうして? 何で?

メールが返ってこない理由が、分かった気がした。

…私は、捨てられたの?

答えの出ない疑問が、頭の中を駆け巡った。


そう言えば…、と昨日の電話の事が蘇った。
見知らぬ番号。
家電のだ。

…もしかして、あれはサイの実家の番号…。

その考えが頭に浮かんだ。
私はいてもたってもいられなくなり、その番号にかけてみた。

『もしもーし。』

受話器越しに女の人の声が聞こえた。

「あ、あの…。」

私はそこがサイの家かどうか尋ねた。
女の人は、そうだと答えた。
そして私は、サイにかわって貰えるように頼んだ。

『…はい?』

いつもより低く聞こえる声。
それが家族の前だからという事も分かっている。
これは、サイの声だ。

「私が誰だか分かる?(笑)」

私は思わず浮かんだニヤニヤ笑いをしながら言った。

『…もしかして?』

受話器の向こう側で、サイの笑いを感じた。

「名乗らなくても分かるでしょ?(笑) ところでさ、一体何があったの?」

少し強い口調でサイを問い詰める。

『ん? 別に何もないよ?』

「何もないならメールも電話も繋がるでしょ!?」

『何もないから、何もないんだよ。』

サイは私の質問を微妙にはぐらかす。
私は、それ以上サイを問い詰めるのを止めた。
こういう時のサイは、絶対に答えないからだ。

『…まぁ、何もないなら切るよ?』

それが仕方ないのは分かっている。
でも切りたくない私は、間をとってからサイに「じゃあね。」と言った。

…何もなくて良かった。

それが、私が一番最後に思った事だった。

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