この風に乗って
空は憂鬱そうに広がり、
海に出た頃には雨になった。
島へと渡る船は少しずつ、その速度を増した。
島と港の中間になると
灰にも似た父の骨を
海へ向かい撒いた。
亡くなってすぐに散骨できるわけもなく
季節は冬から初夏へと移り変わっていた
骨は一種、煙のように宙を舞い飛んでいく
船のスクリューに作られた白い波は、
その粉を次々と飲み込み
最後には花束も海の中へ引き込んだ
『定年になったら、二人でゆっくりと世界を周ろう』
珈琲を飲みながら笑顔で話し
夫婦愛を確認しあうように語り合っているのを思い出す。
その骨の一つは風に乗り、
いつまでも世界を旅する
その骨の一つは水の中を泳ぎ、
魚の涙となって海へ溶ける
船は島へと着き、私は防波堤を歩く
その時の風は、
とても強く私は安堵した
この風ならいつまでも飛べる
島風は世界の風の一部となって、
いつまでも旅ができる
でも、いつかこの場所へ
戻ってきて下さい
何十年後になるかわかりませんが、
貴方の愛した人の骨も
私が必ず貴方と同じ海へ送ります
そしたら、
いつか二人で話していた
世界を周る旅ができるでしょう
今はまだ
貴方も淋しいかもしれませんが
先に見ていて下さい
そして貴方の愛した人達を
見守って居て下さい
だけど、
いつか二人で
世界の風となって
朝も昼も夜も
ずっと二人で
旅ができるように
太陽の穏やかな日も
厳しい日も
ずっと二人で
旅ができるように
月のない暗い夜も
弓のようにしなる夜も
ずっと二人で
旅ができるように
愛し合った二人で
始まりも
終わりも
全て見て
愛し合った二人で
永遠だって
時間だって
全て通り越して
いつまでも
世界の風となって
旅をしてください
もう誰も…
病気も何も
二人を別つことはなく
時間さえも
二人で飛び越えて
いつまでも
旅をしてください
だから、
それまでは貴方の愛した人達を
見守っていて下さい
それまでは貴方を愛した人達を
見守っていて下さい
いつか二人の骨が
同じ風になるまで
海に出た頃には雨になった。
島へと渡る船は少しずつ、その速度を増した。
島と港の中間になると
灰にも似た父の骨を
海へ向かい撒いた。
亡くなってすぐに散骨できるわけもなく
季節は冬から初夏へと移り変わっていた
骨は一種、煙のように宙を舞い飛んでいく
船のスクリューに作られた白い波は、
その粉を次々と飲み込み
最後には花束も海の中へ引き込んだ
『定年になったら、二人でゆっくりと世界を周ろう』
珈琲を飲みながら笑顔で話し
夫婦愛を確認しあうように語り合っているのを思い出す。
その骨の一つは風に乗り、
いつまでも世界を旅する
その骨の一つは水の中を泳ぎ、
魚の涙となって海へ溶ける
船は島へと着き、私は防波堤を歩く
その時の風は、
とても強く私は安堵した
この風ならいつまでも飛べる
島風は世界の風の一部となって、
いつまでも旅ができる
でも、いつかこの場所へ
戻ってきて下さい
何十年後になるかわかりませんが、
貴方の愛した人の骨も
私が必ず貴方と同じ海へ送ります
そしたら、
いつか二人で話していた
世界を周る旅ができるでしょう
今はまだ
貴方も淋しいかもしれませんが
先に見ていて下さい
そして貴方の愛した人達を
見守って居て下さい
だけど、
いつか二人で
世界の風となって
朝も昼も夜も
ずっと二人で
旅ができるように
太陽の穏やかな日も
厳しい日も
ずっと二人で
旅ができるように
月のない暗い夜も
弓のようにしなる夜も
ずっと二人で
旅ができるように
愛し合った二人で
始まりも
終わりも
全て見て
愛し合った二人で
永遠だって
時間だって
全て通り越して
いつまでも
世界の風となって
旅をしてください
もう誰も…
病気も何も
二人を別つことはなく
時間さえも
二人で飛び越えて
いつまでも
旅をしてください
だから、
それまでは貴方の愛した人達を
見守っていて下さい
それまでは貴方を愛した人達を
見守っていて下さい
いつか二人の骨が
同じ風になるまで
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