流狼−時の彷徨い人−No.38
ノアは暫し無言のままでいた。
半次郎の素質に魅せられ、この地に戻ってきたノアだったが、シャンバラの人間である彼女は、これ以上彼に関わることに躊躇いがあった。
しかし彼女は、思慮を重ねた上で一つの答えを導き出す。
「…オマエの中に眠る力がどれだけのものか、見せてみろ。
それがワタシを納得させる程のものならば、修業をつけてやる」
潜在能力の示し方など知らぬ半次郎は、困惑を隠せないでいた。
「…どのようにすれば、その力を示すことができるのでしょうか?」
「ただ剣を交えればいい、それで相手の力量は量れる。
川中島では、そういう経験をしなかったのか?」
たしかに政虎や南雲と剣を交えた時、その強大な力を感じ取ることができた。
それ故に的確な戦術で対処ができ、活路をひらけていた。
「ファルコンッ!」
ノアの澄んだ声が、空間を駆け抜けた。
その声に反応して、一頭の馬が姿を現した。
漆黒の毛並みをもつその馬は、半次郎が今までに目にしたことがないほどに巨大で、躍動感にあふれた馬体をしていた。
馬はノアのもとへ静かに歩み寄ると、鞍に装備された剣を器用にくわえて彼女に差し出した。
「この剣はシャンバラの材料工学を集結し、作り上げた逸品だ。キサマの刀とは物が違う。
微塵でも油断すれば、その刀ごとキサマの体も二つに別れることになるぞ」
そういって切っ先を半次郎にむけると、ノアの目つきが一変した。
それは初めて出会った時の、身を切り裂くような氷の視線だった。
それだけではない。ノアを中心とする空間までが、その質を変えてしまった。
まるで重力が何倍にも増したかのように、半次郎の自由を奪っていた。
「動の気は相手を威圧するが、その特質。
私の気に生半可な気では、対抗どころか満足に動くことすらできぬぞ」
同じ気の使い手として、政虎や南雲も一流であり、その気には凄まじい威圧感があった。
だが、ノアのそれは次元が違っていた。
彼女が気を発動させた瞬間、半次郎は反射的に気で防御したが、それでも目眩を覚える程に動悸は高まり、鼓膜は悲鳴をあげていた。
ノアの気はそれほどまでに強大であり、常人であらば正気を保つことすら難しいだろう。
半次郎の素質に魅せられ、この地に戻ってきたノアだったが、シャンバラの人間である彼女は、これ以上彼に関わることに躊躇いがあった。
しかし彼女は、思慮を重ねた上で一つの答えを導き出す。
「…オマエの中に眠る力がどれだけのものか、見せてみろ。
それがワタシを納得させる程のものならば、修業をつけてやる」
潜在能力の示し方など知らぬ半次郎は、困惑を隠せないでいた。
「…どのようにすれば、その力を示すことができるのでしょうか?」
「ただ剣を交えればいい、それで相手の力量は量れる。
川中島では、そういう経験をしなかったのか?」
たしかに政虎や南雲と剣を交えた時、その強大な力を感じ取ることができた。
それ故に的確な戦術で対処ができ、活路をひらけていた。
「ファルコンッ!」
ノアの澄んだ声が、空間を駆け抜けた。
その声に反応して、一頭の馬が姿を現した。
漆黒の毛並みをもつその馬は、半次郎が今までに目にしたことがないほどに巨大で、躍動感にあふれた馬体をしていた。
馬はノアのもとへ静かに歩み寄ると、鞍に装備された剣を器用にくわえて彼女に差し出した。
「この剣はシャンバラの材料工学を集結し、作り上げた逸品だ。キサマの刀とは物が違う。
微塵でも油断すれば、その刀ごとキサマの体も二つに別れることになるぞ」
そういって切っ先を半次郎にむけると、ノアの目つきが一変した。
それは初めて出会った時の、身を切り裂くような氷の視線だった。
それだけではない。ノアを中心とする空間までが、その質を変えてしまった。
まるで重力が何倍にも増したかのように、半次郎の自由を奪っていた。
「動の気は相手を威圧するが、その特質。
私の気に生半可な気では、対抗どころか満足に動くことすらできぬぞ」
同じ気の使い手として、政虎や南雲も一流であり、その気には凄まじい威圧感があった。
だが、ノアのそれは次元が違っていた。
彼女が気を発動させた瞬間、半次郎は反射的に気で防御したが、それでも目眩を覚える程に動悸は高まり、鼓膜は悲鳴をあげていた。
ノアの気はそれほどまでに強大であり、常人であらば正気を保つことすら難しいだろう。
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