子供のセカイ。143
しばらく首をかしげていた女は、コキリ、と小さな音を立てて首を戻した。懐から小さな鞘を取り出し、小刀を納める。それを再び懐にしまった後、女は腰に下げていた長剣をすらりと引き抜いた。
「……。」
両者はしばし闇の中で睨み合った。闇といっても、三人ともすでに目が慣れていたため、相手の一挙手一投足まで見ることができたが。
女はすっと横に動いた。円を描くような滑らかな動きだ。耕太もつられて女と反対方向に動いたが、女の目が見ているものに気づいてハッとなった。
(こいつ、美香が狙いで…!)
すぐに美香を庇う体勢に戻り、剣の切っ先を女に向ける。女はピタリと立ち止まると、一瞬腰をため、次の瞬間、床をへこませる勢いで蹴り、耕太に飛びかかった。
迫り来る凶刃を二本の剣を横にすることでなんとか受け止めた。ガンッと金属のぶつかり合う音が響き、女は次いで二撃、三撃と、耕太の隙を狙って刃を突き入れてくる。耕太は必死になって剣を振り回し応戦したが、女の速さ故、どうしても防戦一方になってしまった。
「…く、そっ!」
短い方の長剣で女の剣の動きを止め、もう片方の長剣でリーチの長さを利用し、女の腹を狙ったが、押さえていた長剣は直ぐ様弾かれ、逆に懐に入られる形となる。
「っ!」
目の前に迫った女の赤い瞳に、ひやりと背筋が凍った。とっさに短い方の長剣を逆手に持ちかえ、女の肩を突こうとしたが、その前に膝頭で重く鳩尾をえぐられた。
ごふっと息を吐き、耕太は思わず両膝をついた。しかし頭上から降り下ろされる剣の影に気づいて、反射的に横に転がる。先程まで耕太の頭があった所を刃が斬り抜け、女の剣の切っ先がカンッ、と床を鳴らして跳ね上がった。
「がっ…あ……!」
吐き気を催しながら、それでも耕太は少しも怯まなかった。左手に持っていた剣をあっさり手離すと、低い視界でとらえた女の足首をつかんで勢いよく引っ張る。最早外道と言われようがなんだろうが関係ない。今ここで生き延びる。美香を守り抜く。耕太にとってそれ以上大切なことなど、一つもなかった。
女はまさか足をつかまれるとは思っていなかったのか、ぐらりとバランスを崩した。しかしすぐに体勢を取り戻すと、しつこく足をつかんでいる耕太の手首をもう片方の靴の踵で勢いよく踏みつけた。
「うぁあ!」
耕太は痛みに叫んだ。確実に今、骨にヒビが入った。
「……。」
両者はしばし闇の中で睨み合った。闇といっても、三人ともすでに目が慣れていたため、相手の一挙手一投足まで見ることができたが。
女はすっと横に動いた。円を描くような滑らかな動きだ。耕太もつられて女と反対方向に動いたが、女の目が見ているものに気づいてハッとなった。
(こいつ、美香が狙いで…!)
すぐに美香を庇う体勢に戻り、剣の切っ先を女に向ける。女はピタリと立ち止まると、一瞬腰をため、次の瞬間、床をへこませる勢いで蹴り、耕太に飛びかかった。
迫り来る凶刃を二本の剣を横にすることでなんとか受け止めた。ガンッと金属のぶつかり合う音が響き、女は次いで二撃、三撃と、耕太の隙を狙って刃を突き入れてくる。耕太は必死になって剣を振り回し応戦したが、女の速さ故、どうしても防戦一方になってしまった。
「…く、そっ!」
短い方の長剣で女の剣の動きを止め、もう片方の長剣でリーチの長さを利用し、女の腹を狙ったが、押さえていた長剣は直ぐ様弾かれ、逆に懐に入られる形となる。
「っ!」
目の前に迫った女の赤い瞳に、ひやりと背筋が凍った。とっさに短い方の長剣を逆手に持ちかえ、女の肩を突こうとしたが、その前に膝頭で重く鳩尾をえぐられた。
ごふっと息を吐き、耕太は思わず両膝をついた。しかし頭上から降り下ろされる剣の影に気づいて、反射的に横に転がる。先程まで耕太の頭があった所を刃が斬り抜け、女の剣の切っ先がカンッ、と床を鳴らして跳ね上がった。
「がっ…あ……!」
吐き気を催しながら、それでも耕太は少しも怯まなかった。左手に持っていた剣をあっさり手離すと、低い視界でとらえた女の足首をつかんで勢いよく引っ張る。最早外道と言われようがなんだろうが関係ない。今ここで生き延びる。美香を守り抜く。耕太にとってそれ以上大切なことなど、一つもなかった。
女はまさか足をつかまれるとは思っていなかったのか、ぐらりとバランスを崩した。しかしすぐに体勢を取り戻すと、しつこく足をつかんでいる耕太の手首をもう片方の靴の踵で勢いよく踏みつけた。
「うぁあ!」
耕太は痛みに叫んだ。確実に今、骨にヒビが入った。
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