｢あ、おはようこざいます｣
ザックは後ろにいる少女に気付いて後ろを振り返ると、挨拶をした。
｢…！｣
少女はショートカットの髪をなびかせて頭を振りながらエミリーに詰め寄った。
｢お母さん、あの人は誰？｣
｢え…と、ザックさんよ。農作業の手伝いに来てくれたの｣
エミリーはしどろもどろにならながら、答えた。
｢ザックさんね。もう農作業の手伝いはいいですから。帰ってくれませんか？｣
｢は？｣
ザックは少女の言葉に唖然とした表情を浮かべた。
｢は？じゃないです。早く帰って下さい｣
｢い、いやいやいや、まだ後一週間契約が残ってるんです。それに賞金だって貰ってないですし、困りますよ｣
｢契約？賞金？｣
少女は鋭く目を光らせて、ザックを見た。
｢あなた、もしかして賞金稼ぎなの？｣
｢え、ええ…まあ…｣
｢お母さん…｣
少女はエミリーの方に顔を向けると、睨みつけた。
｢私を売る気なのね…？｣
｢ち、違うわ！あなたが居なくなって農作業でお父さん一人に負担が掛かっていたの。だから少しでもそれが軽減されるように、賞金稼ぎを雇わざるを得なかったのよ｣
エミリーは激しく首を横に振りながら、早口でまくしたてた。
｢ダリルたちに頼めばいいじゃない｣
｢今は繁忙期よ。とてもじゃないけど手伝いに誘えないわ｣
｢…っ｣
少女は唇を噛み締めて、もう一度ザックの方を向いた。
｢？｣
ザックは訳がわからない、といった表情で小さく首を傾げた。

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