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チンゲンサイ。<29>

[597]  麻呂  2010-02-16投稿

今の状況は、確実に俺達にとって不利であった。



『ユウ!!走れ!!
ボーリング場から出るんだ!!

映画館に向かうぞ!!』



『マ‥マジで?!』


俺は透かさず、ボーリングの球を2つ手に取り、


走りながら、その瞬間を待った。



『逃げても無駄だと言っているだろ―がッッ!!

待ちやがれッッ!!』



リーダー格の男が再び距離を縮め、



ドタドタと、俺とタイを張るほど短い足をバタつかせて近付いて来るのを――



『今だ!!

食らえっ魔球!!

“鼻くそボール”だっっ!!』



俺の魔球は、みるみるうちに、狙った獲物めがけて走り出す。



『うわっっ!!

何だこの球は!!

回転しやがって!!
まるで生き物みてぇだ!!』



リーダー格の男が、何やらブツブツ言いながら、


俺の魔球をかわそうとしたその時だ――


『うっ‥うわあぁぁぁぁっっ!!』



球を蹴り上げようと、男が勢いよく足を振り上げた瞬間に、


俺の魔球は、見事に作戦通りの動きを見せた。



ギュルンと男の足元で向きを変えた球は、その短い足をかわし、



勢い余って、男はその場に大の字にひっくり返ってしまったのだ。



『オヤジ‥‥すげぇよ‥‥‥。』



『ユウ!!

俺の鼻くそは色、粘着度と、共に天下一品を誇る事の出来るものだ!!

球に貼り付ける事で、複雑な回転をかける事が出来る!!』


今は、ユウに詳しい説明をしている時間は無い。



『とどめだっっ!!
“鼻くそボールしかも鼻毛付き!!”』


俺は、更に後続の男達に向かって、もう1つの魔球を放り込んだ。



『ぐっっ‥うおぉぉぉぉ〜〜〜っっ!!
きっ‥汚ねェ〜〜〜っっ!!』



男達の野太い悲鳴が辺りに響き渡り、



俺達は、ボーリング場スタッフの可愛い女のコに一礼をしながら、その場を立ち去った。

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