サークルチェンジ #44
「8時に校門前に集合だったんだけど…
9時までにトヨチュウに行かねーと試合が…」
青山は車の横まで来ると、膝に手をついて前屈みになりながら、説明不足気味に答える。
「やはり野球部の生徒か、兵は迅速を尊ぶ。乗るがよい!」
運転席の男は頭の回転が速いのか、事情をすぐに読み取り機転を利かす。
青山は車の右側に回り、乗り込む。
(何だ!?このおっさんの趣味…)
マセラティの旧モデル、ブルーメディテラオネのグランスポルトのステアリングを握っていたのは校長の織田だ。
青山が驚いたのは、織田が南蛮鎧をプリントしたようなレーシングスーツで身を固めていたからだ。
「9時まではまだ四半刻ほどある。安心いたせ。」
マセラティにはお約束のインパネに埋め込まれたティアドロップ型の時計に目をやると、織田は車を出す。
一旦、学校敷地内に入りUターンすると、校門前の坂を下っていく。
最寄りのインターから高速に乗ると車内には織田の甲高い声同様、爽快なサウンドが響く。
「わしは南蛮渡来の物が好きじゃ。もっともこの馬は伊太利のもんじゃが。」
織田は前方を見つめながら自身が駆る車について触れるそぶりで呟く。
青山は無言。それでも織田は続ける。
「倭人は珍しいもんに対して恐れるきらいがある。お主ならこの意味が解るであろう。」
織田は青山が純粋な日本人ではないことを顔立ちから感じており、今まで受けてきたであろう冷遇を察すると、暗に伝える。
「よいか、この景色よく見ておくのじゃ。」
織田はそう言うと、まるで馬に鞭を入れるかのようにスロットルを全開にする。
タコメーターの針が右側へと振り上げられると同時に、咆哮をあげながらトライデントのエンブレムが輝くフロントノーズが後輪のトルクによって猛進する。
たちまち視界は狭まり、右側のシートに座る青山には、等間隔に途切れているはずの車線を区切るラインが一本の線であるかのように繋がって見える。
青山はあまりの非日常的なスピードに恐怖を覚え
ながらも視線を置く。
(このおっさんどんだけハチャメチャなんだよ…)
間もなく、車は目的地に無事到着。
「野球の球は点ではなく、線で捉えるそうじゃな…己に負けるでないぞ。」
織田は幸運を祈るかのように、車を降りる青山を見送った。
9時までにトヨチュウに行かねーと試合が…」
青山は車の横まで来ると、膝に手をついて前屈みになりながら、説明不足気味に答える。
「やはり野球部の生徒か、兵は迅速を尊ぶ。乗るがよい!」
運転席の男は頭の回転が速いのか、事情をすぐに読み取り機転を利かす。
青山は車の右側に回り、乗り込む。
(何だ!?このおっさんの趣味…)
マセラティの旧モデル、ブルーメディテラオネのグランスポルトのステアリングを握っていたのは校長の織田だ。
青山が驚いたのは、織田が南蛮鎧をプリントしたようなレーシングスーツで身を固めていたからだ。
「9時まではまだ四半刻ほどある。安心いたせ。」
マセラティにはお約束のインパネに埋め込まれたティアドロップ型の時計に目をやると、織田は車を出す。
一旦、学校敷地内に入りUターンすると、校門前の坂を下っていく。
最寄りのインターから高速に乗ると車内には織田の甲高い声同様、爽快なサウンドが響く。
「わしは南蛮渡来の物が好きじゃ。もっともこの馬は伊太利のもんじゃが。」
織田は前方を見つめながら自身が駆る車について触れるそぶりで呟く。
青山は無言。それでも織田は続ける。
「倭人は珍しいもんに対して恐れるきらいがある。お主ならこの意味が解るであろう。」
織田は青山が純粋な日本人ではないことを顔立ちから感じており、今まで受けてきたであろう冷遇を察すると、暗に伝える。
「よいか、この景色よく見ておくのじゃ。」
織田はそう言うと、まるで馬に鞭を入れるかのようにスロットルを全開にする。
タコメーターの針が右側へと振り上げられると同時に、咆哮をあげながらトライデントのエンブレムが輝くフロントノーズが後輪のトルクによって猛進する。
たちまち視界は狭まり、右側のシートに座る青山には、等間隔に途切れているはずの車線を区切るラインが一本の線であるかのように繋がって見える。
青山はあまりの非日常的なスピードに恐怖を覚え
ながらも視線を置く。
(このおっさんどんだけハチャメチャなんだよ…)
間もなく、車は目的地に無事到着。
「野球の球は点ではなく、線で捉えるそうじゃな…己に負けるでないぞ。」
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