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呼び人 18

[295]  春歌  2010-02-20投稿
「誰が何に気をつけんだよ?」
「あぁ゛?てめーに決まって…」
相手の目つきが、冬夜の顔を凝視し一瞬呆けたものに変わった。
その一瞬に冬夜は気付き眉を寄せる。心は極小さな変化には気付いていない様だった。
言いかけた彼は口を閉じて僅かばかり沈黙した後、すぐに再び苛つきを含む声音で文句を吐き捨てる。
「てめぇ後輩だろ。随分態度でけーじゃねーか?」
「あんた先輩だろ?ぶつかっただけの後輩に、随分おとなげないんじゃねーの?」
「んだと…」
生意気な後輩の切り返しに彼は短く舌打ちをする。

冬夜は相手が先輩だろうが何だろうが下手に出る気はさらさらなかった。
それは元来の彼の性質上、そしてそういう態度でいられるに十分な理由があるためだ。
喧嘩ならば年上も同い年も年下も、幅広く売り買いしていた。
それに目につく様なこの男の金髪も気に食わなかった。
「年上には敬語って習わなかったのかお前は?」
「習ってねーよそんなもん」
くだらない。
ハッ、と息を吐き出して金髪を一瞥する。
(習う人間なんていなかったぜ。まぁ教えられたとしても従うかって話だけどな)
そう心の中で呟くと、金髪が冬夜にも劣らぬ不機嫌な空気を垂れ流し、冬夜の肩にわざとぶつかって隣を通り過ぎて行った。
与えられた衝撃に更なる苛立ちを感じながら、予想外にあっさりとした相手の退散に違和感を覚える。

実は冬夜、この金髪を知っていた。
冬夜もさることながら、彼もまた容姿に合い喧嘩っ早いことで冬夜らの間ではそこそこ名の知れた人物。
強さもそれなりであると聞く。
そんな人間が、なぜ後輩相手に手も出さず自分から逃げる様な真似をする?
彼が冬夜を知っている可能性もあるがーーーいや、恐らく先程の一瞬の間はそのせいだろう。
だが知っているからといって何なのだ。
冬夜たちの様な連中にとっては相手の強さを恐れて簡単に逃げること、それはつまり最上級の恥と思われていた。
冬夜自身、前までそうだった。今はそんな考えが間違いだと思えるようになったが。

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