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天使のすむ湖17

[335]  雪美  2006-08-19投稿
ある日一樹がいつもより少し遅く着くと、いつもの出迎えがなく、不思議に思いながら書斎のドアの前まで行くと、香里の悲鳴が聞こえた。
「イヤーやめてー」
鍵が中からかけられていて、俺はドアを突き破り中に入った。
英治が香里を押さえつけて襲おうとしているところだった。
「やめろー」
俺は奴を殴りつけ、引き離した。
しかし、スカートは破かれブラウスは引きちぎられていた。
「やってることわかってんだろうなー」
「俺はそっちも教えてくれと頼んだだけさー」
もう一発殴った。そのときには香里は頭を抱えてひどい頭痛を訴え、泣きじゃくり怯えきっていた。
「心配するな、未遂だよ」
「とにかくお前は帰れーなめた真似しやがって、二度と姿を見せるなー」
俺は胸ぐらをつかみ、表に引っ張り出した。
「理由は後で教えてやるから、帰れー獣野郎。」

医師から診察を受けて注射をすると眠り始めたが、時々目を覚ますと一樹にさえも怯えて震えていた。
俺はどうすることも出来なくて、香里の抑えられたらしき手首の赤い跡に、頬をすり寄せて、油断して英治を近づけた自分を責め、
「ごめんよ、香里・・・」
寝ずに様子を見ていた。うなされて汗をかくと、拭いて着替えをした。
霧が深く、リビングの天使の絵が涙を流していた。
俺は許せなかった。香里の純情な体と心を傷つけた英治を殺してやりたい衝動にかられながら、何度も悔やんだ。
 
それから香里は以前のようには話せなくなり、時々うわごとのように何かを言うだけになった。表情も乏しく、輝くような笑顔を見られない日が続いて、医師からはうつ病と診断され、精神安定剤が処方されるようになった。


二学期が始まり、英治には香里の病のことを話して、二度と近づくなと念を押した。
笑うことさえ出来ないほどのショックを与えた奴に、殺してやりたいと恐ろしい言葉を俺は吐いていた。
英治は謝るものの、許す気にはなれなかった。
心配した岬が二人の不仲にわけを聞きにきたが、話す気にもなれず、英治には気をつけるようにとだけ話した。
岬は首をかしげていたが、口に出すのもおぞましく思い出すだけでも怒りに震えた。
 
後悔しても悔やんでも変えられない現実に、腹立たしさが収まらず、壁を殴った。

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