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幸運の女神-第二部 2

[534]  朝倉令  2006-08-19投稿


俺たちのバンド、ラットラーに品川恵利花が加入して半月ほど経った頃、不思議な話を耳にした。



「ねェ、リョージ」「何だ?」

「もう聞いてるかなぁ?」

「だから何を?」


「ウチらのライブ観にきたお客さん達がさぁ〜、ライブのあった翌日からいい事が続くんだって噂してるんよ。

ちょっとした評判みたい」

「マジかいっ!……」



ベッドの隣でゴソゴソ身を起こしたエリカ。


彼女が細い体にシーツを巻きつけながら無造作に言った言葉に俺、倉沢諒司は驚きもし、かつ呆れていた。



(さすが、女神パワー …)


「リョージどしたん? 黙り込んじゃって」


「いや、… すっげ〜リアクションに困るだろ?そんな話いきなり言われても」



エリカは、梅雨明けの空の様にスカッと抜けた明るさで平然としていたが、この俺は流石にそこまで大物(?)ではない。



噂の真相を探るべく、俺はいつも来る常連の一人でもある、情報通の友人からこっそり裏を取ってみる事にした。






「よっ!諒司ぃ、この間のライブは傑作だったよな!
クワトロのアホ連中が来るといつも‥」

「信ちゃん、それよりもさ、変わったウワサ聞いてないか?」



俺は高校以来の友人でバイト仲間でもある柿崎信一に、さっそく聞き込みを始めていった。


悪い奴ではないが、口数の多過ぎる点がタマにキズだ。


信一のマシンガントークにはホトホト閉口させられたが、どうやら噂は真実らしい…





 同時刻、コルスの事務室



「ハァ…… 青蘭の言う通りだわ。 

何度試しても、出てくるカードはディスティニー(運命)…」




妖しいきらめきを宿した、神秘的な深みを持つ瞳。


メデューサと名乗っていた頃の名残であった。


手島美和は昔の商売道具を手にしていたのだ。



「あの坊やにどうやって切り出そうかしら……」



手島美和はタロットカードをデスクの上にパサッと放り出し、頬杖をつくと、思案顔で倉沢諒司のタイムカードに目を向けていった。






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