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子供のセカイ。146

[397]  アンヌ  2010-02-22投稿
「これからどうする?」
「そうね……。ここから出た方がいいかもしれない。今の人が仲間に連絡してたら危ないし。」
「つか、こいつは何なんだろうな?」
耕太は薄気味悪そうに、ピクリとも動かない黒装束の女を見下ろした。
「追手なのは間違いないけどさ。なんか……変だったよな?人間らしくないっていうか……。それに、明らかに美香を狙ってた。」
「……どうせ舞子の想像物でしょ。」
美香はあっさりと言い放つと、女から目を背け、その場からさりげなく離れた。そんな美香の様子を、耕太は訝しげに眺めていた。不意に奇妙な気分になって、耕太はぼう、と考え込む。そういえば、ずっと美香に聞いてみようと思って、忘れていたことがあった。しかし、それは普通に聞くのが躊躇われるような、美香の心に触れる繊細な問題でもあった。
どうすっかな、と一瞬頭を悩ませたが、遅かれ早かれ聞かざるをえないことだと気づいて、気持ちを固めた。女に蹴られた腹のせいで、それほど気分が優れなかったこともあり、耕太はふらふらとソファーに近寄ると、どさりと落ちるように倒れ込んだ。
振り返った美香は、耕太の様子に気づいて心配そうにソファーに駆け寄った。
「大丈夫?」
「大丈夫だけど、ちょっと休みたい。移動するのはそれからでもいいだろ?」
美香はこくりと頷き、小さく謝った。気づかなくてごめんなさい、と。目を合わせない美香を見て、ますます耕太の中の違和感は強くなっていった。
耕太の隣の余ったスペースに、さっきのように座り込んだ美香に向かって、耕太はぽつんと言葉を投げかけた。
「……お前はさ、ぶっちゃけ舞子のこと、どう思ってる?」
「――え?」
美香は動揺を隠しきれなかった。まるで心を読まれたかのような問いだったからだ。
「それ、どういう意味?」
乾いた笑い声と共に、美香は必死にとぼけて見せる。しかし耕太の目は欺けなかった。
床を見つめる耕太の表情には、どこか諦めたような影がさしていた。
「お前は、立派な姉だよな。自分の妹のためとはいえ、普通はここまでするか?しかも悪い奴がいて、そいつが舞子を唆したわけでもない。覇王だって舞子の想像物なんだから、結局、こんな事態になっちまったのも、本当は全部舞子の責任だ。」
「……あんた、何が言いたいの?」
知らない内に美香は、氷のように冷たい声で答えていた。

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