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子供のセカイ。149

[411]  アンヌ  2010-03-02投稿
普段なら容赦なく言っただろうが、今は美香も弱っている。「舞子を憎みたくない」と、その本音を聞けただけでも、耕太としてはありがたかった。やはり舞子よりも美香の方に関心がある耕太としては、単純に「舞子を助けるため」に命を懸けるには、動機が薄かったからだ。しかしそれを美香が心から望んでいるのなら、耕太の方も心構えができる。
「話してくれてありがとな。」
耕太は美香の頭を軽く撫でて言った。普段なら子供扱いを嫌がって微妙な反応をする美香だが、今は大人しくうつむいていた。
美香は鼻をすすって、頬についた涙の跡をごしごしとぬぐうと、じっと耕太の腹辺りを見つめた。
「体は大丈夫?さっきの人と戦った時に、お腹を蹴られたみたいだったけど。」
「たぶん大丈夫。そろそろ行くか?」
「ええ。無理はしないでね。」
二人はソファーから立ち上がると、入り口に向かって歩き出した。
後ろに横たわっている黒装束の女の遺体が気になったが、なんとなく振り返ることもできず、そのまま両開きの扉を押し開ける。
扉の向こうには夜の帳が降りた前庭が広がり、未だ暗い空には月と星が輝いていた。
二人は洋館の外へ出ると、それぞれぐうっと背中を反らして伸びをした。夜気は少し肌寒かったが、苦になるほどではない。
前庭を横切ろうと歩き出したその時、風を切るような微かな音をとらえて、美香はふと空を見上げた。
視界に飛び込んできた光景に、美香は絶句して立ち尽くした。
夜空を舞うように、いくつもの黒い影が、軽やかに星々の間を飛行している。それはコウモリのようでもあり、狩りの最中の鷹のようにも見えた。――しかし、それは人間だった。両手を翼のように広げて空を切り、すらりと伸ばした足を波打たせることで器用に風に乗って飛んでいる。影は二十ほどもあり、その姿は輪を描くようにだんだんと大きくなっていった。明らかに地上を目指して降りてきている。呆然と口を開けて空を見上げる耕太と美香に向かって……。
その影一つ一つが、先程戦った者と同じような服装をした黒装束の女たちであることに気づいて、ようやく美香たちはハッと我を取り戻した。
耕太が美香の手をつかんで、敷地の境界に立つ鉄格子の門扉に向かって走り出したのと、頭上から矢のように無数の銀光が放たれたのが、ほぼ同時だった。

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