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子供のセカイ。150

[413]  アンヌ  2010-03-05投稿
「うわああ!」
「きゃああ!」
二人は思わず悲鳴を上げ、もつれるように門扉に倒れ込んだ。体当たりのような形となり、その衝撃で門がガシャンと派手な音を立てて開く。
「う、うあ…!」
「美香、大丈夫か!?」
頭を強く打った美香は呻き声を上げ、耕太はそんな美香の肩を支えた。美香はようやく頷き、後ろを振り返ると、無数の小刀が前庭のあちこちに突き立っていた。
耕太に引っ張りあげられる形でなんとか立ち上がり、二人は脇目も振らずに夜の街を走り出した。
夜闇の中で、命懸けの鬼ごっこが始まった。空飛ぶ鳥のような女たちが、背後から空中を滑るように追ってくるのを感じる。断続的に風を切る音が聞こえた。
灯りのついていない家々の角を曲がる度に、ガッと何かがぶつかるような音が響く。耕太は走りながら首だけで振り返り、見なければよかったと後悔した。女たちは長剣を抜き放ち、二人の――もしくは美香の――首目掛けて振り回していたのだ。間一髪のところで狭い路地に飛び込むために、家の塀や屋根に長剣がぶつかって、鈍い音を立てていたのだった。
美香と耕太は宛てもなく、ただ闇雲に走り続けた。せっかく治安部隊の若者たちからコルニア城の場所を聞き出しても、どちらがラディスパークの中央寄りの東の方角なのかもわからない。だいたい、今城に向かったところで袋叩きに合うのがオチだった。
そうこうしている内に、建物のない、やたらとだだっ広い場所に走り出た。最初にラディスパークに来た時に着いた広場とはまた違い、そこは土がむき出しの何もない空き地だった。身を隠すものがなくなり、二人はぞっと背筋が凍った。鳥の群れのような女たちの一団から、一人外れて下降してきた女が、赤い瞳を煌めかせ、美香の背中に向かって刃を振り降ろした。
耕太は美香を突き飛ばし、折れずに残っている先程の長剣で女の剣を受けた。
落下の重力と女の体重を伴った斬撃に、耕太の腕にあり得ないくらいの付加がかかり、耕太は手首の激痛に目を大きく見開いた。
「……痛ッ!」
「耕太!?」
思わず剣の柄を手放した耕太は、手首を押さえてうずくまった。美香は駆け寄って耕太の背中に寄り添った。洋館で戦った時の怪我が響いているのだと悟り、耕太は鼻にしわを寄せて唸った。

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