夢十夜 〜第三夜〜
こんな夢を見た。
黒い髪の異国の男が、太陽の照りつける荒野をたった一人で歩いている。
男はつい先ほど二度と戻らないと誓いをたて、故郷の街を出てきたのだ。
小さいが、白壁の美しい家々が建ち並ぶ住み良い街だった。
そこでは、私は赤い髪をした女であり、男の恋人であった。
街を出ようとする男を連れ戻そうと追いかけて来たのだ。
歩き続ける男に私は歌で呼びかけた。
故郷の素晴らしさを、外の世界の残酷さを、どんなに男を愛しているかを唄いあげた。
だが男は決して歩みを止めない。振り向きすらしない。
私は小さくなってゆく男の姿を見つめながら途方に暮れ立ち尽くした。
男に行ってほしくはないが、男について行く気にもならなかった。
ただ、男に届かなかった言葉がたまらなく悲しかった。
そして、男の決意の固さに嫉妬した。
そこで目が覚めた。
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