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天使のすむ湖19

[283]  雪美  2006-08-20投稿
「わかったら明日にでも見舞いにいってやってくれ、お前の名前ばっか呼んで見ていられねぇんだよー何でみんなお前なんだよーくそっ」
そう言うと英治はこぶしを振り上げてやめた。
背を向けるときに、奴の涙が少し見えた。


俺は何をしてきたんだ、確かに英治を責めてもはじまらない、けして岬を嫌いなわけじゃないし、飽きたというのでもない。その部分は変わらない、でもいつしか香里が俺の中では大きな存在になり、心が二分割されたようで、振り子のように揺れていた。二人とも一樹を今必要としている。それは十分わかるつもりだから、どうにも出来ないもどかしさを感じながら眠れない夜をすごした。

岬の見舞いに英治に言われたように行くことにしたが、気持ちは重かった。何を言えばいいのかわからず、見舞いの花を持ちながら病室に入ると、岬は天井を見てうわごとを言っていた。か細い声を聞くと、
「一樹」
俺の名を呼んでいた。
「俺だよ一樹だよ、岬、一人にしてごめんな」
「きてくれたのー嘘じゃないよね、私、ずっと待っていたのよ。」
差し出した手にしがみついた。
「もう、帰らないでここにいて、お願い、」
その日は消灯時間ぎりぎりまで岬のそばにいて、やせ細った姿に俺は責任を感じていた。心の中には、香里の様子もまた気になり、二人を傷つけた俺が背負う現実の罪の重さに耐えかねていた。
それぞれが傷つき、こんなに切ないのははじめてで胸の奥が痛んだ。

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