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あれから

[407]  ふく  2010-03-06投稿
君を抱き寄せた
君は迷いもなく僕の背中に腕を回した
寒い雨の日
君の体温があまりにも暖かかった
静かな街に強い雨音と君の鼓動だけが聞こえる
君が溜め息を漏らす
僕の方にゆっくりと顔を上げる
『ねぇ』
優しい声
君の頬が街頭で光る
『なに』
小さな声で聞き返す
『好きよ』
笑顔も見せずに言う君の表情に真実を知った
相変わらず強くなる雨が何だか悲しかった

それから僕は女友達から呼ばれた合コンと言う名の飲み会に行った
出逢いのない日常で僕は断る理由もなかった
仕事が終わり待ち合わせ場所へ向かう途中何となく君に電話をした
そして飲み会の事を伝えた
君は『そう、楽しんでおいで』とあっさりとした返事をした
僕は何をしたかったのだろう
そんな事を言えばただ君を傷付けるだけなのに伝えられずにはいられなかった

飲み会はそれなりに盛り上がったけれど
目の前にいる女の子に魅力は感じなかった
君なら何て言うだろう
君にこれを食べさせてあげたい
君の仕草を思い出しながら君と話したい君に会いたいと思わずにはいられなくてただ胸が苦しくて心から笑えない自分に気付く

君は今何をしているだろう
本当は僕の言葉に不安で仕方なくて泣いたりしていないだろうか
本当は分かっていた
あの電話で君が引き止めてくれたら僕は行かなかった
君を試していた
君に一言『行かないで』と言って欲しかった

あれから君の事ばかり考えていたのに
僕は一体何をしているのだろう

君から伝わる鼓動が僕への想いだった
あの日
僕の耳に聞こえたのは君の鼓動ではなく
本当は僕の鼓動だったのかもしれない
君を抱き寄せた僕の行動は目の前の君を離したくなかったから
気付いていたのに君の告白に答えられなかった

これから君に会いに行こうか
抑え切れなかった君の『好き』に答えを出す為に
僕も『君が好き』だと伝える為に

今日も雨が降っている
不安で一杯のはずの君を
また僕の腕で抱き締めて安心させてあげたい
もう大丈夫
君以外の人はいらない

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