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天使のすむ湖20 香里編

[563]  雪美  2006-08-20投稿
 香里が襲われてから一ヶ月が過ぎようとしていた。
セミは姿を見なくなり、夜は風も涼しくなって鈴虫が鳴いていた。
それでも病状は悪化し、あれから表情も戻らないままの秋を迎えていた。
よく夜更けまで話していた頃は、秋には紅葉狩りに行こうと計画をしていたが、今はそれどころではなく、インターネットでいいカウンセラーを見つけてはたずねたりする日々を送っていた。しかし話すことも忘れた香里にはそれは難しく、安定剤を出されて終わりと言うのが普通になっていた。

しかし、そんなある日興味深い記事を見つけた。
催眠療法の記事であった。PTSD心的外傷ストレス症候群には有効と書かれていた。少し疑わしいとは思ったが、よくなるならばと最後の望みをかけてその先生を訪ねた。

まずは、香里と会ってもらい俺は先生にわけを話した。
「やってみましょう。病気による悪化のせいなのか、それとも心的外傷によるものなのか、うつ病なのかをはっきりさせましょう。」
と言ってくれて、週末は催眠療法に通う日々がはじまった。中には俺も入れてはくれなかった。
何度か受けるうちに、先生からはやはり心的外傷が理由だと告げられ、その部分が軽くなれば、寿命も少しなら延ばせると先生は言った。
催眠療法に通い一ヶ月、衝撃的事実が先生より話された。実は襲われたのははじめてではなく、香里の元夫の葛巻正明が嫌がる香里を時々無理やりにしていたらしいということである。家庭内レイプの事実だったのだ。
それを聞いた俺は、怒りの震えが止まらなかった。

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