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予告ホームラン【3】(全4話)

[753]  2010-03-09投稿
「た…担架は…いらん」

声の主はA自身だった。

Aはドクターの制止を振り切り、気丈にも立ち上がって見せた。

拍手が響き渡る球場内。

Aは無事をアピールし、ドクターチェックもクリアすると一塁へゆっくりと歩き出した。

試合前から今試合にかける鬼気迫る思いを感じ取っていた監督は、Aに代走を送ることはしなかった。

完投目前で危険球と判断された相手投手は退場となり、投手交代で試合が再開された。

そして次の打者が快音を響かせる。

リリーフの代わり端をとらえた打球は、外野手の頭上を越える渾身の当たり。

Aはフラフラになりながらも三塁を回り、ついに同点のホームを踏んだ。

そしてゲームは延長戦へと進んでいった。

同点のまま迎えた12回裏。

再びバッターはA。

もはや当たり前となった予告ホームランを、観客は大歓声で迎え入れる。

相手投手はすでに4人目の守護神が投げていた。

球場全体にこだまするAコール。

予告通り一発が出れば、サヨナラ勝ちの場面。

しかしこの回無得点なら、規定により引き分けになってしまう。

Aの打席は早くもフルカウント。

第7球。

振りかぶった相手投手の足が大きく上がった。

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