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−ギルドの剣− 1

[298]  ギル  2010-03-16投稿


「なら俺と一緒に、旅をしない?」

唐突に彼女はそう聞かれた。
自分はこの貧しい国の王の娘、今目の前にいるこの男の子には憎まれてもおかしくなかった。

 なのに彼はそんなことを言うのだった。
豪華な装飾がついた自室の窓の手摺りに寄りかかって、ぼんやりと夕日を眺めているその背中にいきなり、「旅をしないか?」とぶつけられても困る。

何故?と一応聞いてみた。

「確かめたいんだ。世の中の人の心の中とか。神話みたいな歴史の話の真実とか」

言いながらこちらへ来る彼。私が窓脇に寄ると、彼も私がしたように夕日を眺めた。

「そんなことしてどうするの?」
私は不服そうに聞く。やっぱり似ている。

「んー…。どうしようかな。みんなの気持ちをつなぎたい。今の世の中はなんだか落ち着かないし」

どうしようかなって…。一瞬、何を迷ったの? そうは思っても、そのあとの言葉にはどこか共感出来るところがあった。

 確かに今の連合国は落ち着かない。ノースブルグとの技術競争、南北ギルド同士の小競り合い、不安を訴える我が国の民。

父親の隣の玉座から国民の顔を見下ろしてきた私にもわかる。その彼が言うのだから、間違いのない話だろう。

国民皆が気持ちをひとつにし、この不安な時代を乗り越えたい。その気持ちはよく解る。でもどうやって?

「もうちょっとこう、お気楽にっていうか。北の人にのんびりすることを覚えてもらえたらなぁ」

やっぱりよく似ている。彼は私の兄にそっくりだ。こうして窓の向こうを仰ぐ様を見ていると、死んだ兄を思い出す。

でも話すことは妙にノーテンキだった。

「だから協力してくれない?」
「はあ…。 あなたそれって本気?」
「うん、結構本気かな」
結構って…。 そんな風でいいの?

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