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子供のセカイ。154

[411]  アンヌ  2010-03-18投稿
隣を見れば同じように目を丸くした耕太が、キョロキョロとあちこちを眺めている。美香と目が合うと、信じられない、という顔をした。
「美香……これ、どういう……?」
「間に合ってよかった。」
また背後から声が聞こえる。それは間違いなく大人のそれで、低く落ち着いてはいるが、どこか風のように爽やかだった。何かに気づいたように、耕太はすごい勢いで後ろを振り返った。美香もそれに習う。そして言葉を失った。
先刻美香たちが倒した黒装束の女の遺体の脇に、とても小さな子供が立っていた。
子供はまだ四、五歳ほどに見えた。少なくとも、身長はそのくらいの子供と同程度だ。髪は深緑色で、大きな瞳もまた同じ色をしている。肌は蝋燭のように白く、クリーム色のゆったりとした衣をまとい、腰の辺りを赤い帯紐でしめていた。
子供は美香たちの方に歩み寄りながら、ゆったりと唇をほころばせ、意味ありげに微笑んだ。
「初めまして、美香。耕太の方は、『久しぶり』かな?」
目の前で立ち止まった小さな子供が、少年と少女を見上げながら、大人のような声で、大人のような口調でしゃべっている。美香は霞がかかったように頭がぼんやりとしてしまい、しばらく目の前の現実が受け入れられなかった。さっきの今で、これはあまりにもおかしい。こんなことが起こっていいはずがない。
本当についさっきまで、美香は殺されかけていたのだ。膝をついた固い地面の感触や、目の前を歪ませた涙の色まで思い出せる。長剣が風を切り裂いて降り下ろされる音を、確かに聞いたはずだったのに――。
「夢、だったの……?」
思わずぽつんと呟けば、子供は美香を優しい目で見つめながら、ゆっくりと首を横に振った。
「夢じゃない。あれは確かに起こった現実で――未来だ。」
「お前は……もしかしてあの時の?」
耕太がゆっくりとしゃがみこみ、子供と目線を合わせながら恐る恐る尋ねた。子供は今度は耕太を見て、にやっと笑った。
「ああ、よく覚えててくれたね。用意した『道』もちゃんと見つけてくれて、嬉しかったよ。」
耕太の顔がぱあっと華やぐのを、美香は複雑な顔で眺めていた。
「あの時はありがとう!“闇の小道”にいた時はもちろん、『道』のことも。俺たち、それで本当に助かったんだ。」

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