ミルトニア?
(命を奪ったって…。)
喫茶店の客は、凛と由宇の二人になった。
マスターは、CLOSEの札を掛け、隣のテーブルに腰をかけて珈琲を飲みながら話しだした。
「凛ちゃん、僕から言ってもいいかい?」
凛は、下を向いたまま頷いた。
「あれは…3年前。春一番が吹いていて、満開の桜が空を薄桃色に染めるように舞っていたぁ。
とっても、美しい景色で、彼は、いつも以上に力説していたなぁ。
凛ちゃんは、彼の力説が可笑しくて半分バカにしたように、聴いていたよ。
彼は…そんな凛ちゃんに感じて欲しかったんだろう。
僕に桜の花びら舞いさせて良いかって。
客もいなかったし、OKしたんだよ。
彼は、コートを手に桜の樹の下で、コートを広げ花びらを必死になって集めていたよ。
むろん、凛ちゃんは、待たされてたよ。
何が起こるかも気づかない振りをしていたね。なぁー凛ちゃん。
コートいっぱいに集めた花びらを早く見せたかったのだろう。
飛び出したところに車が来てな、コートの桜の舞う中で…。即死だったよ」
マスターは、珈琲を一口飲み、ゆっくり瞬きをした。
マスターは、話を続けた。
「凛ちゃんは、何が起きたか一瞬わからんかっただろう。
でも…この敏感な凛ちゃんは察知して、外に駆け出した。凛ちゃんは、彼が何処にいるかわからんから這いつくばって彼の身体を捜していたよ。
僕は、凛ちゃんを立たせて彼の側に連れて行ってな、凛ちゃんは自分のために彼が死んでしまったと。自分の目が見えていたら、彼は、死ななかったと悔やんで自分を憎んで、笑う事を止めたんだよ。
ただ…彼が一番好きだった食べる時の笑顔。食べる時だけは、笑っていようと決めたらしい。
これが3年前の事だよ」
由宇は、胸が苦しかった。凛の心の闇が晴れない今、複雑な想いだった。
「由宇君。私…の中には、彼が見えない映像としてまだ…いるの。
このままなのかわからない。
わからないの。私も本当は、進まなきゃって…。だから…もう少しこのままで…」
由宇は、自分には、受け止める事が出来ないと思った。
でも…凛への気持ちを諦める事も出来なかった。「わかった。でも…凛ちゃん。ほんの数分でいいから、俺も見て欲しい」
17歳の由宇には、精一杯の答えだった。
凛は、頷いた。
それから、しばらくしてゆなから凛が留学先に戻る事を知らされた。
(そうだった。一時帰国中だった。…。)
喫茶店の客は、凛と由宇の二人になった。
マスターは、CLOSEの札を掛け、隣のテーブルに腰をかけて珈琲を飲みながら話しだした。
「凛ちゃん、僕から言ってもいいかい?」
凛は、下を向いたまま頷いた。
「あれは…3年前。春一番が吹いていて、満開の桜が空を薄桃色に染めるように舞っていたぁ。
とっても、美しい景色で、彼は、いつも以上に力説していたなぁ。
凛ちゃんは、彼の力説が可笑しくて半分バカにしたように、聴いていたよ。
彼は…そんな凛ちゃんに感じて欲しかったんだろう。
僕に桜の花びら舞いさせて良いかって。
客もいなかったし、OKしたんだよ。
彼は、コートを手に桜の樹の下で、コートを広げ花びらを必死になって集めていたよ。
むろん、凛ちゃんは、待たされてたよ。
何が起こるかも気づかない振りをしていたね。なぁー凛ちゃん。
コートいっぱいに集めた花びらを早く見せたかったのだろう。
飛び出したところに車が来てな、コートの桜の舞う中で…。即死だったよ」
マスターは、珈琲を一口飲み、ゆっくり瞬きをした。
マスターは、話を続けた。
「凛ちゃんは、何が起きたか一瞬わからんかっただろう。
でも…この敏感な凛ちゃんは察知して、外に駆け出した。凛ちゃんは、彼が何処にいるかわからんから這いつくばって彼の身体を捜していたよ。
僕は、凛ちゃんを立たせて彼の側に連れて行ってな、凛ちゃんは自分のために彼が死んでしまったと。自分の目が見えていたら、彼は、死ななかったと悔やんで自分を憎んで、笑う事を止めたんだよ。
ただ…彼が一番好きだった食べる時の笑顔。食べる時だけは、笑っていようと決めたらしい。
これが3年前の事だよ」
由宇は、胸が苦しかった。凛の心の闇が晴れない今、複雑な想いだった。
「由宇君。私…の中には、彼が見えない映像としてまだ…いるの。
このままなのかわからない。
わからないの。私も本当は、進まなきゃって…。だから…もう少しこのままで…」
由宇は、自分には、受け止める事が出来ないと思った。
でも…凛への気持ちを諦める事も出来なかった。「わかった。でも…凛ちゃん。ほんの数分でいいから、俺も見て欲しい」
17歳の由宇には、精一杯の答えだった。
凛は、頷いた。
それから、しばらくしてゆなから凛が留学先に戻る事を知らされた。
(そうだった。一時帰国中だった。…。)
感想
感想はありません。