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叶った願い事

[1220]  hiro  2010-03-21投稿
静かな夜だった。
空には無数の星が散らばっている。
その中を、一際明るい星が横切った。流れ星。
サキはそれが流れる一瞬の間に自らの願い事を3回言い放った。
「アイコと入れ替わりたいアイコと入れ替わりたいアイコと入れ替わりたい」

うまく言えた、とサキは確信した。


サキの魂を、裕福で楽しい生活を送るアイコの身体へ、アイコの魂を、貧乏でつまらない生活を送るサキの身体へと移して、お互いの魂を入れ替えて欲しい、と言うのがサキの願い事だった。
それがもうすぐ叶うのだ。

これからはアイコとなって贅沢に暮らせる、という期待感と同時に、アイコに対する哀れみの感情もわいてきた。
そしてサキは、
「いい気味だ。貧乏人の生活も味わってみろ」
と呟いた。



その夜、流れ星の妖精は、人々の願い事を叶えるために街中をせわしなく動き回ってせっせと働いた。
願い事をうまく3回言えた人はほんの十数人だったので、なんとか全ての願い事を叶えることができそうだった。
2軒の家を何度か行き来して、2人の魂を入れ替えたりもした……。




結局サキは、いつまで待ってもサキのままだった。
願い事が少し非現実的すぎたのか、うまく3回言えなかったのか……。

サキは落胆した。



同じ時、アイコも落胆していた。
実はあの夜、アイコも流れ星に願い事をしていたのだ。
しかし、いまだにその願い事は叶っていない。
小さなため息をついた後、アイコは一人呟いた。


「せっかく、貧乏なサキの生活を体験して優越感にひたって、サキにわたしの贅沢な生活を体験させて、わたしとの貧富の差を見せつけてやろうと思ってたのに…」

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