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子どもは家を選べない〜その32〜

[658]  真理康子  2010-03-22投稿
祖父の思いを受けてか、結衣子は小さな騎士のいる場に出向くことを大変楽しみにするようになった。
事実、ここで育つことが出来た方が幸せだったろう。
そんな矢先、結衣子が学校で書いた作文が文部大臣賞を受け、絵画がNHKのコンクールで優勝した。
低学年の快挙は学校のみならず地域やテレビでもてはやされた。
こうなって喜ぶのは、結衣子の母、千鶴子だった。

絵や文章が取り沙汰されている処に加えて、ピアノまでも、全国コンクール出場者にノミネートされた【我が子】を前に、その【母親】である自分がもてはやされることに気をよくして、曲がりなりにも、周囲の目のある時は、華美に飾り立てて、母親であることを強調した。

結衣子の祖父は、そんな娘の家事のフォローをしつつ、もう、結衣子を施設に預ける必要はないか…と、たかをくくった。
その、僅かなズレが、結衣子の生涯を左右するとは、夢にも思わなかったのだろうか?

やはり、我が子の幸せを念じた為の、大きなミスだったと言えるだろう。

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