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海賊と鬼使い 16

[288]  ホオズキ  2010-03-28投稿
(あぁ…眠れん…)
フウリはベッドの上でゴロンゴロンと数回寝返りをしたあと、ガバッと起き上がった。
そのままそっと船室を出ると、見張り台に登った。
(『フウリ、早く寝よと言っておろう。』)
遠い昔の声がよみがえる。
(『ははうえ…でも、ねむくないのです。』)
困ったように言って母の隣に座り込む。
(『全く鬼使いの才なんてものも困り物じゃの』)
母は溜め息をつくと、静かに言った。
(『のう、フウリ。そなたには以前話したな。月のお話じゃ。』)
(『月のお姫さまのお話ですか?』)
(『そうじゃ。あの話には歌がついておる。今夜はそなたが眠れるよう、歌ってしんぜよう』)
静かに歌い出した母の声はまだよく覚えている。
フウリは『月の歌』を静かに口ずさみ始めた。
歌ってくれた母はもういない。
フウリは胸がギュッと締め付けられるような感じがした。
美しい、強い人だった。
フウリはうとうととまどろみ始めた。最初に母が歌ってくれた時も、すぐに眠ってしまったものだった。
フウリは見張り台を降りると、フラフラと船室に戻った。

さっき甲板を歩いていたのは、ラウトだったか。こんな夜中にどこにいくんだろ…

ほとんど寝ぼけていたフウリは特に気に止めず、眠ってしまった。



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