僕と和子と敬太郎 第八話
敬太郎に「ちょっと話がある」と呼び出されたのは、僕がこの時代に来てちょうど一年が経つ頃だった。
「今月末にある鎮守様のお祭り、三人で行く約束しとったやろ」
「ああ、秋祭りね」
「健を男と見込んで、ひとつお願いがある」
と彼は神妙な顔つきになった。
「その日、和ちゃんの両親が法事で家におらんのは知っとるな」
「うん」
「わしはその日男になろうと思っとる…」
「え?」
「つまりや、…和をわしの女にしようと思っとるんや」
彼は僕から視線を逸らして、少し照れ臭そうな表情をした。
「で、僕にどうしろと?」
「祭りの途中で、ちょっと用事を思い出したとか何とか言うて、わしと和を二人きりにして欲しいんや」
彼の一大決心であると理解した僕は快く引き受けた。
「ああ、そんな事ならお安い御用だよ。うまくやれよ、良い報告待ってるぜ」
いつの時代でも男と男の間には、そんな青臭い友情みたいなものがあるもんだ。僕はまだ女性を知らなかったので、ちょっと羨ましい部分もあった。と同時に、ふと、こんな事を考えてしまった。
(そう言えば僕の母は、両親、つまりお祖父ちゃんとお祖母ちゃんがかなり若い頃生まれた子供だったという事を聞かされた事がある。ひょっとしてひょっとすると、今回の敬太郎の決心が思惑通りに遂行されて、僕の母親が生まれてくる事になるのか?そうなのか?だとすると僕は、母親が生まれてくるという歴史事実に少なからず手を貸す、という事になるのか…それってどうなんだろう、本来その時代の人間じゃない者が過去に抵触してもいいものなんだろうか。でも、母が生まれてこなければ、僕は生まれてこない事になる。そもそも僕がこうしてここに存在してる事自体が、既に歴史を変えてる事になるのでは?)
僕はそんなふうに考えた。毎晩毎晩考えているうちに、祭りの日は来てしまった。
「今月末にある鎮守様のお祭り、三人で行く約束しとったやろ」
「ああ、秋祭りね」
「健を男と見込んで、ひとつお願いがある」
と彼は神妙な顔つきになった。
「その日、和ちゃんの両親が法事で家におらんのは知っとるな」
「うん」
「わしはその日男になろうと思っとる…」
「え?」
「つまりや、…和をわしの女にしようと思っとるんや」
彼は僕から視線を逸らして、少し照れ臭そうな表情をした。
「で、僕にどうしろと?」
「祭りの途中で、ちょっと用事を思い出したとか何とか言うて、わしと和を二人きりにして欲しいんや」
彼の一大決心であると理解した僕は快く引き受けた。
「ああ、そんな事ならお安い御用だよ。うまくやれよ、良い報告待ってるぜ」
いつの時代でも男と男の間には、そんな青臭い友情みたいなものがあるもんだ。僕はまだ女性を知らなかったので、ちょっと羨ましい部分もあった。と同時に、ふと、こんな事を考えてしまった。
(そう言えば僕の母は、両親、つまりお祖父ちゃんとお祖母ちゃんがかなり若い頃生まれた子供だったという事を聞かされた事がある。ひょっとしてひょっとすると、今回の敬太郎の決心が思惑通りに遂行されて、僕の母親が生まれてくる事になるのか?そうなのか?だとすると僕は、母親が生まれてくるという歴史事実に少なからず手を貸す、という事になるのか…それってどうなんだろう、本来その時代の人間じゃない者が過去に抵触してもいいものなんだろうか。でも、母が生まれてこなければ、僕は生まれてこない事になる。そもそも僕がこうしてここに存在してる事自体が、既に歴史を変えてる事になるのでは?)
僕はそんなふうに考えた。毎晩毎晩考えているうちに、祭りの日は来てしまった。
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