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チンゲンサイ。<33>

[697]  麻呂  2010-03-30投稿

『お客さん。

そこのラーメン屋は、遅くまでやってるから、

僕らの仲間内でも、ファンが結構いるんですよ。

いやぁ、こんな時間に親子で行かれるなんて、なかなか粋じゃないですか。』



饒舌な、そのタクシーの運転手は、


店に着くまでの間、ほぼ1人で話していた。


普段は無口で口下手な俺にとって、少々、わずらわしく感じたが、


ガラの悪い若者達に絡まれ、疲れ切っていたのと、


ユウの素直な心を、久しぶりに見れた事もあり、


今夜だけは、そんな小さな事にこだわるのは、よそうと思った。


店の前でタクシーを降りた俺達は、店内に入ると、


この時間帯からの予想に反し、数人の客が店内にいる事に少し安心してから適当に席に着き、


早速、ラーメンを注文する事にした。



『ユウ。ここの“にんにくもりもりラーメン”が美味いんだ。

別売りの“半熟煮玉子”を上に乗っけてもらう事も出来るんだぞ。』



『うん。俺もそれでいいや。』



俺が、よくここのラーメン屋に行く事を、ユウは当然知らないだろう。



『ギョーザも頼むか?!』



『‥‥うん。』



家と会社を往復するだけで毎日クタクタで、


家族サービスをする事もなく、休日はただ爆睡するのみだったからな。



『山田さん。

珍しいじゃないですか、こんな時間に。
そちらは息子さんですか?!』



湯切りの手つきも鮮やかに、店主が俺に話し掛ける。



『はい。急に、ここのラーメンが食べたくなったもので。

息子を誘って来たんです。』



『あら、そうでしたか。

お父さんに似て、男前だねぇ!!』



親子揃って、顔が腫れるほど殴られていたはずなのに、男前とは。


社交辞令だと分かっていたが、


思わず、ユウと顔を見合わせ笑ってしまった。


それほど広くはない店内には数人の客。

昼間は、いつも店主の奥さんが店を手伝っているのだが、


今日は姿が見えず、店主は、アルバイトと思われる若い男性と2人で店内業務をこなしていた。

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