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好きだった

[347]  祐介  2010-04-01投稿

綾菜に好きだと言えなかったことを今も後悔している。


綾菜と出会ったのは、綾菜が高校一年生の終わり頃だった。

俺は塾講師のバイトをしている。

ある日、綾菜というもうすぐ高校二年生になる子を担当してほしい、と塾長に言われた。


綾菜を初めてみた時の感想は、白くてぽっちゃりしていて餅みたい…という感じだった。

「先生ってよく駅前のRINAにいるよね。」

それが綾菜との初めての会話。

「えっ。ちょっ何で知ってんの。」

俺の慌てた様子がおかしかったのかくすくす笑って、
「バイトしてるから。彼女さん可愛いなーって思ってたけど最近来ないね。」

そうなのだ。

俺は高校の卒業式の日に彼女にフラれてから、RINAといういつも彼女と行っていた喫茶店に行かなくなったのだ。

「別れたし。」

そう言うと、綾菜はまずいと思ったのか
「あっごめんなさい。」
と謝ってきた。

「別にいいよ。引きずってないし。」

彼女には好きな人ができたと言われて別れた。

人の気持ちは変わるものだし、こうなったのも仕方がなかったと思う。


「終わったよ。」

数学のプリントをやっていた綾菜が白い手を伸ばして渡してきた。

元カノは指輪やら、マニキュアやら指や爪に色々施していたから、飾られていない女の子の手をみたのは久しぶりだったからか、少しどきどきした。

いや、もうこの時には綾菜に恋をしていたのかもしれない…


綾菜が急に塾をやめることになった。
二年生にあがるから、予備校に行くのだという。
最後の授業の日、
「少しの間ありがとうございました。」

と言ってくれた。

「RINAに行けば綾菜に会えるんでしょ。」

バイトはやめないと思っていたから、「うん」と返ってくると思っていた。

「バイトも辞めるよ。
国立大学目指してるから、バイトどころじゃないしね。」


その時初めて俺は綾菜が好きだと気付いた。

失いたくないと思ったのが遅すぎた。



今年大学一年生になった綾菜へ

憧れだった国立大学への進学は叶ったかな。

あの時からニ年たったのに、俺は今でも茶髪に巻き髪の子をみると綾菜かと思ってみちゃうよ。

また会える日を願って…

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