携帯小説!(PC版)

トップページ >> ノンジャンル >> alone 28=知らない=

alone 28=知らない=

[420]  兼古 朝知  2010-04-02投稿


「晶!!」

医務室に、夕が息を切らしながら駆け込んできた。

「夕ちゃん、走っちゃ駄目じゃない…」

その福野の言葉が聞こえたのか聞こえていないのか、夕は言った。

「晶が…あの林に、いなかった…から、あたし、あたし…!!」

夕は ふらふらと、晶の眠るベッドの脇に座り込んだ。そのまま夕は泣いてしまった。

「死んじゃったのかと思ったよぉ…!!」

「夕ちゃん…」

(この子も優秀な医療班の一員。だけど…まだ15歳だもの…現状がつらくないはずが無いものね…)

福野は居たたまれなくなって、眉間に皺をよせた。
しばらく訪れた静寂の中で、ぼそりと荒い息遣いと声が聞こえた。

「…ぬ…かよ」

「え…?」

夕が袖で涙を拭いて顔を上げた。同時に、夕の白い髪の上に大きな手が乗る。

「んな、簡単に…死んで…たまっか…よ。は、はははッ…」

見ると、晶が夕の頭に手を乗せ、笑みを浮かべていた。

「脂汗かいてるくせに…よく言うわよッ」

夕は また涙ぐんで晶の手をどけた。

福野は晶の行動が晶の兄、晴一に似ていると感じた。
当時、強がりで意地っ張りで泣き虫だった晶にいつでも「大丈夫だ」と声をかけ、笑顔を見せていた晴一。

夕は晴一を知らない。
晶と夕は晴一の死後、晶が夕の家の近くに越したことによって知り合ったのだから。

夕は晶の優しさの根源を知らない。
今の晶 そのままの晴一の優しさを知らないから。

感想

感想はありません。

「 兼古 朝知 」の携帯小説

ノンジャンルの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス