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僕と和子と敬太郎 第十一話

[270]  カルロス伊藤  2010-04-05投稿
(この野郎!いいとこばかり持って行きよって。和も何顔赤くしとんじゃ、アホが!)
「あれ?」「あっ?」
二人は互いに顔を見合わせた。
「健ちゃん何処行ったん?」
「消えた…」
「そんなアホな」
辺りを見回しても健二の姿は無かった。
「健ちゃん!健ちゃん!」
(健の奴、うまい事消えよったな、それにしても一瞬やったな…ん?でもちょっと変じゃ…)
「ねえ、健ちゃん何処行きよったん!ねえ、ねえ!」
「あ、ああ…何か用事でも思い出して先帰ったんと違うんか」
「でも消えたよ、パッと消えたよ!」
「ああ、すばしっこい奴や」
「そんな訳無いやろ、目の前から居なくなったんよ!」
(なにこいつ血相変えてムキになっとんじゃ)「そんなに心配せんでええ!そんなに奴の事が気になるんか!」
「だって、だって!」
「さっきなんぞ抱きしめられて顔真っ赤にしよってからに。お前、健に惚れたんか!」
「・・・」
「そうか、そうなんか!」
「よう考えてみい、最初奴が現れたのも急にやった。その時から、なんや怪しい奴と思うとったんじゃ。やっぱり奴はアメリカのスパイか何かだったんじゃ。急に居なくなったのも任務が遂行したからじゃ。それともあれや、奴は日本で戦死したアメリカ兵の亡霊ぞ、幽霊やったらパッと現れてパッと消えるじゃろが!」
「敬ちゃん馬鹿と違うか!もうええ、わたし健ちゃん探してくるけん!」
「勝手にせえ!」
敬太郎は和子を追い掛けようとはしなかった。
彼の計画もこの一件で全て立ち消えとなってしまった。

この夜、二人が結ばれる事は無かった。

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