alone 35=紡いだ言葉=
「!」
水鶴は目を覚ました。
あたりを見回すと、見慣れた己の部屋。生活に最低限の物しか置いていない、質素すぎる部屋。
(夢を、見ていた…)
自分の記憶と一切違わぬ夢。泣き虫な晶、明るい晴一、笑う自分…。
あの時の晴一の言葉。
『俺も優しくなりてーんだけどよ』
『ミッチーみたいにさ』
そして先刻の晶の言葉。
『お前は優しくて…俺と笑ったりしてて…。お前…変わったよ…』
(違う)
(どれも違う)
(私は、私は…)
水鶴は、先程まで見ていた夢での自分の言葉に続く言葉を紡いだ。
「私は優しくなんかないよ、晴一にぃさん…。今も昔も…」
(外見がどう変わっても。
笑うことを
やめたとしても。
冷たい表情しか
できなくなっても。
優しくないのは
昔から変わらない…。
私が笑うのは…
私が慰めたりするのは…
優しさなんかじゃなく…)
「ただ、嫌われるのが恐かっただけだ…」
ぽつりと、静寂の中で水鶴は呟いた。
そして水鶴は起き上がり、部屋を出ようと扉に手をかけた。
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